一部 高校一年
プロローグ
1話 帰ってきた男
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なかった少年は突然立ち上がり、クラウディオに詰め寄った。
「ええ、ですが残念ながら今はお会いになれません。」
「わかった、じゃあここからにする。清楚、聞こえるか!?」
「「!!」」
クラウディオとヒュームは驚いて少年を止めようとしたが遅かった。
「龍斗!?」
向こうから少女のものと思われる声が聞こえた。
「ごめんな、俺が弱かったせいで守ってあげられなくて。お前は俺を救ってくれたのに、俺はお前が辛いのに会いにいく力すらない。」
「違う、私のせいで危ない目に合わせて、…守ろうとしたのにオレ自身が傷つけて…」
「清楚、お願いだから自分を責めないでくれ。今は弱くて会うさえ出来ないけど、誰よりも強くなるから、誰よりも強くなってまたお前に会いにいくから!! 」
そこで突然景色がぼやけ白みを帯び現実に引き戻されていった。
「…あれから五年か」
黒月龍斗はまだふわふわと定まらない思考の中で先ほどの夢を思い返し、ふとつぶやいた。
あの夢の中の少年は16歳になっていた。龍斗はまだ若干のだるさを覚えながらもベッドから出てトレーニングウェアに着替え、まだダンボールで山積みになっている自室を出た。
彼は現在、川神学院の学生寮である島津寮に住んでいる。といっても彼が越してきたのは昨日のことであり、まだ荷解きすら終わっていなかった。玄関に行くために食堂の前を通ると、横から声をかけられた。
「おはよう、龍斗ちゃん。昨日はよく眠れたかい?」
「はい、おかげ様でぐっすり眠れました」
声をかけてきたふくよかな着物の女性は島津麗子さん。島津寮の寮母であり、彼の所属する風間ファミリーの島津岳人、通称ガクトの母親でもある。風間ファミリーというのはいわゆる仲良しグループみたいなもので、リーダーがキャップこと風間翔一だから風間ファミリーというのである。龍斗は最近まで旅をしていたが、小学5年生の時に川神に引っ越してきてから旅に出た中一の夏までの短い間だが、風間ファミリーに所属しており、昨日帰ってきたことにより再会を果たしたのである。
「こんな朝早くからランニングかい? えらいねぇ、うちのガクトなんて遅刻ギリギリまで起きやしないってのに」
「久しぶりに川神に帰ってきたので、色々と見てまわりたくて。朝食までには戻りますので」
「そうかい、気をつけてね」
「はい、行ってきます」
彼は高校が始まるのと同時期に川神に戻り、昨日は風間ファミリーによる再会パーティーがあったため、こうして川神の街を見るのは二年半ぶりである。龍斗はワクワクしながら寮を出た。
久しぶりの川神は多少の変化はあっても大きな変化はないようだ。物足りなかったがなんとなく安心した。しばらく町を見てまわった後、河原を走って
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