第T章:剣の世界の魔法使い
ユイの心
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ーバーライド》する。後にシェリーナも知るところとなる、《心意システム》の力だった。
キリトとアスナのデータに触れた結果、ユイのプレイヤーコードはキリト・アスナの物を足して2で割ったものになった。キリトとアスナの家にほど近いあの森に実体化したユイは、唯々、「二人に会いたい」という感情だけで動いていたという。
自らが人でないこと。それを語って涙したユイは、どこかドレイクにも似ていた。ユイが記憶を取り戻したのも、ドレイクの《魔法》の余波を浴びることで、システム的な干渉を受けたことにあった。しかし、度重なるシステムへの否定で、ユイはカーディナルに目を付けられてしまった。
今、ユイの体は崩壊の一途をたどっている――――
「パパとママがそばにいたおかげで、二人が笑ってくれたおかげで、私も笑顔を取り戻せました――――さよなら、パパ、ママ、シェリーナさん、ドレイクさん」
「ユイ!行くな!!」
「ユイちゃん!!いやだよ!行かないでよ―――――!!」
光の粒となって、アスナの腕の中でユイが消滅していく。
「ドレイク、何とかならないんですか!!」
「――――やってみる価値はあります。必ず成功するとは限りませんが――――」
「それでもいいです!おねがいします、ドレイク!!」
シェリーナはドレイクの手を握る。今、何か救いがあるなら、どんなに確率が低い奇跡でも頼りたかった。ドレイクはシェリーナの眼を見ると、分かりました、と一度だけ頷いた。
ドレイクが左手をふる。出現したのは青いシステムウインドウ。画面を素早く操作したドレイクが、その一点を、祈るような表情で押す。
アスナの腕の中で、ユイを構成していた光、その最後のひとかけらが消滅しかけた。しかしそこで、それを上書きするように白い光が集約する。光は集まって、1つの小さなクリスタルをつくり出した。
「――――それは、ユイさんのデータをカーディナルから切り離したものです。いかなる事象があっても、キリトさんとアスナさんの元から消えることはありません。ユイさんの心の結晶ですよ」
ドレイクが、驚くキリトとアスナに語りかける。アスナは、それをしっかりと握りしめる。
「ユイちゃん――――」
「ユイ……」
***
結局、ドレイクの《魔法》や、ユイの《心の結晶》をつくり出したその技術に関しては、キリトとアスナが「お礼」としての形で不問とすることになった。
かくしてまた、いつもの日々が戻ってくる。
そして2024年11月7日、デスゲーム《ソードアート・オンライン》開始から二年と2日立ったこの日、遂にアインクラッド第七十五層攻略戦が始まる。
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