第T章:剣の世界の魔法使い
ユイの心
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アスナにすがりつく。キリトがアスナとユイを守るように立ちふさがる。
「これは……」
これは、プレイヤー達の負の感情。ユイと出会ったあの日、ノイズの様に走った、プレイヤー達の絶望の感情だ。
「なぜ、これが!?」
驚愕するシェリーナをよそに、死神の暗黒の大鎌が振るわれる。
瞬間。
フィールドが、掻き消えた。
文字通り、斬撃を食らったところが黒く消滅する。
「な……」
「なんだ、これは……」
キリトが絶句する。死神は、音のない叫びをあげて、鎌を振り回す。鎌が振るわれるたび、フィールドが消滅していく。このままでは、シェリーナ達も危ない……と、その時。
「大丈夫だよ、皆」
アスナの腕の中で、ユイが呟いた。
「ユイ?」
「ユイちゃん!?」
驚くキリトとアスナを振り払い、ユイが走り出す。その右手に、死神のそれとは真逆の、光の波動が集まっていく。そこにあったのは、希望。プレイヤーたちの笑顔。
「ォオオオオ―――――」
死神が、初めて声のある悲鳴を上げる。ユイの光の波動が、一本の剣をつくり出し、それが暗黒の波動ごと死神を消し去っていく―――――。
光は、陥没したフィールドをも塗り替えて、元の姿に戻していく。全てが終わった時、そこには何事もなかったかのように、全てが始まる前の静かなダンジョンがあるのみだった。死神の姿もない。ただ、黒い髪の少女が立っているのみだった。
少女――――ユイは、こちらを振り返ると、泣き出しそうな顔で、言った。
「みんな……全部、思い出したよ……」
***
ユイの話がすべて終わった。
ユイの正体は、《カーディナル・システム》によって作られた《メンタルヘルス・カウンセリング・プログラム》――――プレイヤーの感情を監視するAIだった。
『私を始め、九体のAIがその役割を担うはずでした』
しかし――――あの日、はじまりの日に、カーディナルによってユイ達《MHCP》は1つの命令コードを刻み込まれる。
曰く、「全プレイヤーへの干渉禁止」。
AIとしての存在理由を規制されたユイ達は、プレイヤーの絶望にふれて、それを解決できないという自らの目的と矛盾する状態の中で、徐々に崩壊していき、最後には二つだけが残ったという。
『そんな中で、ある日、私は一組のプレイヤーの感情が、今まで見てきた『絶望』とは大きく異なることに気が付きました』
それが、キリトとアスナ。キリトとアスナの『幸せ』『希望』の感情を読み込み、ユイは「彼らの元へ行きたい」と考えるようになったという。
強い《願い》が、カーディナルの一角を|上書き《オ
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