第T章:剣の世界の魔法使い
ユイ
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で助けたい――――ユイがなくしたという記憶を取り戻してあげたいと思っているのだろう。
だが、シェリーナではあのコンソールまでたどり着けまい。キリトですら、あのボスに現在のところ勝機は無い。ドレイクが、倒すしかないのだ。
「行きましょう、シェリーナ」
「はい」
顔を上げたシェリーナには笑顔が戻っていた。自然と、ドレイクの頬も緩み、笑顔をとる。
――――ドレイクに理解できない感情。それは、今自分の胸中を閉める感情だ。シェリーナが笑っていると、胸の中をかき回されるような痛みが走る。これは、なんという名前の感情なのだろうか。
***
アインクラッド第一層、《はじまりの町》。シェリーナには、あまりいい思い出がない。悪夢が始まったあの日、シェリーナは恐怖と絶望で押しつぶされそうだった。アインクラッド第一層が攻略され、少しだけ希望がさしたあの日まで、シェリーナは絶望と不安の中で毎日を暮してきた。
黒衣の剣士が手を差し伸べてくれたことで、やっと絶望を吹きはらい、今日、この日まで生きてきた。
ちらりと隣を歩くドレイクを盗み見る。
ドレイクは、自分が『人間ではない』事を気にしていた。今度は、自分が誰かに手を差し伸べてあげる番だ。ドレイクを救い、彼を悩みから解き放ってあげたい――――それが、シェリーナの今の夢だ。
「それにしても……人が少ないですね」
ドレイクが呟く。キリトも首肯。
「おかしいな……《はじまりの町》は決してプレイヤーが少ないわけじゃないんだが……」
「あっ!人がいるよ!!」
アスナが長い木の前でじーっと身構える男に気付き、声を掛ける。
「あの、すみません……」
「邪魔しないでくれ!!この木の実、売れば5コルなんだ……」
「ご、5コル……」
うん。安い。安すぎる。こんなものでは食事、それも素材アイテムすら買えないだろう。
「あの……フィールドの猪でも倒せばその倍は稼げますけど……」
シェリーナはアインクラッド最弱モンスター、《フレンジー・ボア》のドロップ金額を思い出し、告げた。すると、男はとんでもない!!とでもいうように首を振った。
「正気かあんた!?死んじまうかもしれないだろうが!!」
「……」
まさしく――――まさしく、キリトと出会う前のシェリーナと同じであった。この人は、まだ絶望と不安の檻にとらわれて生きているのだ――――
「……向こうの木がわかりますか」
突然、ドレイクが男に話しかける。男は煩わしそうにそっちを向く。
「……見えるが……?」
「あの木から落ちる木の実の方が高く売れますよ」
「なに!?」
男は目を向くと、高速でそちらに近づいて行った。初期値の敏捷値で
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