第T章:剣の世界の魔法使い
リンダースの町で
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で……」
「シェリーナ、語るに落ちています」
「はっ!」
くすくすと笑うドレイク。ここ数日、こんなふうなコミカルな会話をすることができるようになってきた。ドレイクもよく笑うようになった。ドレイクの笑顔は、どこかあどけないものがあって、年齢を感じさせない。もしかしたら年下なのではないだろうか、とも思わせてしまうほどだ。
「茅場卿は九十五層までは自前で何か起こすということはありませんからね。今日は何もないと考えてOKでしょう」
「そうですか……じゃぁ暇ですねぇ……あ」
「どうしました?」
「ドレイク、どうやら早速約束を果たせそうですよ」
シェリーナは立ち上がると、いつものフードつきローブを着て、ドレイクに向かって右手を伸ばした。
「キリトさんたちに会いに行きましょう。アインクラッドの町中の事もいろいろ紹介しますよ」
***
アインクラッド第四十八層主街区の名は《リンダース》という。第二十二層や第八層と並ぶのどかな街並みが特徴だ。シェリーナがここに来たのは、馴染みの鍛冶師のところにキリト達が行ったとエギルから聞いたためであった。その鍛冶師に『これから行く』という旨のメッセージを送ると、『了解』という返信が来た。
町の風景をもの珍しそうにきょろきょろ眺めるドレイク。いつもはかぶっていない魔導服のフードをかぶって、顔を隠している。
「ドレイクはアインクラッドの主街区に来るのは?」
「《私》としては初めてですね。記憶はされているんですが……改めて見ると、ずっと美しい」
ドレイクの正体は、すでに死んだプレイヤーに人工の魂を植え付けて蘇生させた存在だ。死ぬ前の、宿主であったプレイヤーの記憶はあるものの、それはあくまでも『記録』……映像作品を見ている気分らしい。現実世界の物事をドレイクが知っているのは、彼が幼少期を過ごした仮想世界が、現実世界をトレースした空間であったことに起因するらしい。その仮想世界…ドレイクは『加速世界』と呼んだ…の完成度の高さがうかがい知れる。ドレイクの《母親》である浅木藍博士とドレイクは、ドレイクの魂が十分に成長するまでそこで過ごしたという。
リンダースの町のはずれには、ケルトかイタリアあたりの建築を彷彿とさせる田舎っぽい石造りの建物が並ぶ。その中の一つ、橋のすぐ近くに、水車小屋を構えたその店はあった。
《リズベット武具店》。それが、その店の名前だ。
六月の初めごろ、キリトの《二刀流》用の剣を手に入れるべく、キリト、そしてこの店の店主・リズベットと共に五十五層まで行ったのは、シェリーナの良い思い出となっている。長いひげの村長の長ったらしい話をシェリーナだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ