第T章:剣の世界の魔法使い
《魔法使い》の正体
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「私は、今、どこで、茅場晶彦が何をしているのかすら知っている。ヒースクリフを倒す方法も――――そしてそれを、皆さんに隠している。これらを現実世界に戻っていた時間帯に、警察か何かに連絡していれば……そして、これらの情報を皆さんに明かしていれば……しかし、私はそうしていない。それに、私は人間ではないのに、さも人間の様に澄ましている。人間を『知って』はいても、『理解して』はいないんです。これを、みなさんを『騙している』と言わずしてなんと言いましょう。私が今まであなたと接し、話していた全ての事は、まやかしに過ぎない。これを、あなたを『騙している』と言わずしてなんと言いましょう。……シェリーナ、今私が教えた全ての事を、今すぐ暴露しても構いません。記憶から消し去っても構いません。すべて、あなたの自由です。あなたにはその権利がある。ここまで、付きあわせてしまって申し訳ありませんでした」
頭を下げるドレイク。そのまま立ち上がり、洞窟の出口へと歩き始めようとしたドレイクに
「待ってください!」
シェリーナは、しがみついていた。
「シェリーナ!?な、なにを……」
「……ドレイクさんが驚いているところ、初めて見た気がしました……あの、座って下さい」
「あ、はい……」
本来この洞窟はドレイクのもののはずなのだが。
「ドレイクさん。私、ドレイクさんに『騙された』なんて思ってません。むしろ、感謝しているんです」
「感謝……?」
「はい」
ドレイクが助けてくれなければ、シェリーナは死んでいた。そんな場面が二度。《エネマリア》の住民たちに元気づけられた。シェリーナは、気が付かないうちに《エネマリア》と、ドレイクに、たくさん、たくさん、助けられていたのだ。
「ドレイクさんは、確かに、100%の意味での《人間》ではないのかもしれません。けれど、今私の目の前にいる、【ドレイクさん】という、たった一人だけの《剣の世界の魔法使い》は、間違いなく、一人の人間なんです。私は、ドレイクさんにたくさん助けられました。《エネマリア》の皆さんに、たくさん助けられました。それでいいんです。それで、いいんです」
「それで、いい……私は、人間……」
シェリーナは、なんども、何度も、そう呟くドレイクの赤銅色の瞳が、うるみ始め、そこから大粒の涙がこぼれはじめるのを見た。シェリーナは、手を伸ばすと、その涙をはらう。しかし、あとから、あとから、ドレイクの涙は溢れてくる。
「そう……それで……いい……シェリーナ……」
「涙が流せるっていうことは、人間だっていう、『生きている』っていう証拠ですよ。あなたは、決してまがい物なんかじゃない」
「ありがとう、俺を……《人間》って……《人間》って言ってくれて……ありがとう……」
いつまでも、いつま
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