第T章:剣の世界の魔法使い
《魔法使い》の正体
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シェリーナが目を覚ますと、そこは《エネマリア》でドレイクが寝泊まりしている、あの洞窟だった。シェリーナは焚き木のそばで、毛布にくるまって眠っていたようだった。
昨日――――PoHとドレイクの戦闘の後、シェリーナはキリトがアスナを選んだことを知った。ずっと覚悟してきたことではあったが、しかしショックはシェリーナの心を大きく傷つけ、シェリーナはその場で泣いてしまったのだ。心配したドレイクが、《エネマリア》に連れてきてくれて、《エネマリア》の住民達と一緒に夕食をとり…黒龍王が巨大な魚を一口で食べるという恐ろしくどうでもいい特技を見せてくれた…ドレイクにこの洞窟を借りて寝たのだ。当のドレイクは、シェリーナが『気にしていない』と言ったにもかかわらず、外で毛布にくるまって眠ってしまった。
シェリーナはいそいそと起き出すと、毛布をアイテムストレージにしまった。
「おはようございます」
その時、洞窟の入り口から声がした。振り向くと、そこにはやはりドレイクが立っていた。
「おはようございます、ドレイクさん。あの……昨日は、すみませんでした」
「いえいえ。私も《エネマリア》の皆さんが普段どんな環境で寝ているのか、一度試してみたいと思っていたところだったんですよ」
ははは、と笑うドレイク。思えば、声を上げてドレイクが笑うのを初めて見た気がする。シェリーナも、いつの間にか笑っていた。
本当に、ドレイクは不思議な人だ。その場にいるだけで、まるで空間そのものが彼を讃えているかのように周りが彼につられる。こういうのを《カリスマ性》、と言うのだろうか――――
「……彼らは、まだ起きてこないようですね……あ、入ってもいいですか?」
「あ、はい……というか、もともとドレイクさんの住処じゃないですか!」
ドレイクは一度外を見やると、シェリーナの答えを聞くと、それもそうですね、といって洞窟に入ってきた。
シェリーナの目の前にある焚き木を挟んで向こう側の丸太椅子に座ったドレイクは、正面からシェリーナを見て、数瞬迷ったようなそぶりをしてから……突然、頭を下げた。
「ごめんなさい」
「え!?ど、どうしたんですか……?」
「私は、シェリーナを騙している」
「騙している……?」
それはどういうことか、とシェリーナが聞く前に、ドレイクが後を続けた。
「……私は、最初に出会ったその瞬間から、今、この時に至るまで、存在そのものがあなたを騙しています……シェリーナ、あなたは、私が『この世界で言うところの《何》』に見えますか」
「何に見えるかって……プレイヤー、ですよね。カーソルも出ているし……」
シェリーナがなおも困惑した回答を返すと、ドレイクは苦笑して言った。
「そうです
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