第T章:剣の世界の魔法使い
魔法使いVS地獄の王子
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
俺』を何らかの場面で使い分けているという風に聞こえる――――
PoHはドレイクを注意深く観察し、そして、驚愕に目を見ひらく。
「Impossible!!お前は確かにあの日、殺したはず!!」
「殺した……!?」
どういうことだろうか。シェリーナは、驚愕の声を漏らした。
SAOでは、『殺し損じる』、ということは基本的に起こらない。死体が残らないからだ。プレイヤーの消滅現象であるポリゴン片の爆散エフェクトが消えた後は、そのプレイヤーはナーヴギアによって脳を焼切られ、アインクラッドからも、現実世界からも、永遠に姿を消す。だから、「殺したと思ったのに実は生きていた」ということは、基本的にはあり得ないのだ。
そして、PoHの口ぶりからすると、彼はドレイクが死亡し、アバターがポリゴン片と化して爆散するその瞬間を目撃しているようなのだ。つまり、ドレイクはこの世界で一度死んだ、ということになる。そして、この世界で蘇生する方法はたった一つ。死亡から爆散エフェクト消滅までの10秒間に、《還魂の聖晶石》というこの世界唯一の蘇生アイテムを使うこと。
しかし蘇生クリスタルはオンリーワンのユニークアイテム、現在はキリトによってそれを託されたクラインが所持している。恨み妬みで殺人が起きるこの世界で、その情報はかなり危ない。知っているのはシェリーナを始めとする本当にごくわずかな人間だけだ。
そしてそれは、いまだクラインの手元にある。つまり、この世界で死亡した場合、蘇生する方法は、無い。
驚愕さめやらない表情のPoHに、ドレイクは冷静に答える。
「そうですね。確かに一度HPが無くなり、死んだのを覚えています。しかしそれは――――」
そこでドレイクは口をつぐんだ。
「やめましょう。あなたに話しても意味はない、《地獄の王子》。……それより」
ドレイクの眼に宿る光が一層の怒りの色を覚える。表情が厳しく歪む。
「我々の友人を傷つけた罪を償ってもらいましょう」
ドレイクが言う『友人』が、シェリーナであることは明らかだ。PoHはハッと嗤うと、右手の《友切り包丁》をクルクルと指でまわした。
「笑わせるなよBoy。その木の棒だけで何ができるっていうんだ?」
確かに、ドレイクが持っているのは木の棒だ。それも、ところどころが無骨になっていること、先端に金属の矢じりがついてないことなどを除けば、その外見は非常に《スモールスピア》……槍系の装備の初期武装に酷似していた。さすがのPoHもそれには拍子抜けしただろう。
だが――――だが。シェリーナだけが知っている。あれは、槍などではない。ドレイクに武器はいらない。なぜなら、彼はこの世界唯一の《魔法使い》。で、あるならば
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ