第二章
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い暗さの中で。あの娘が一人立っていた。
「待っていたのか」
「ええ」
俺の言葉にこくりと頷いてきた。その顔が強張っているのが見える。
「来てくれるって思っていたわ。絶対に」
「絶対にかよ」
「そうよ。もう準備はしているし」
「準備!?」
今の言葉には眉を顰めさせた。けれどこいつが何か決めているのはわかった。
「何だよ、準備って」
「私、もう出たいの」
強張った顔を俯けさせた。表情が夜の暗がりの中で見えなくなった。それでも少しだけ表情が見えた。それを見ながら俺はこいつの話を聞いていた。
「この街を」
「この街をかよ」
「ええ、この街とは何処か別の場所に行きたいの」
俯いたまままた言ってきた。
「何処かね。それで」
「それで俺を誘ったのかよ」
「駄目、かしら」
ここで顔をあげてきた。そのうえで俺に問うてきた。
「二人で。駄目かしら」
「二人か」
俺は話を聞きながらとりあえずは懐から煙草を出した。それを咥えてライターで火を点けて少し味わいながら言葉を返した。
「一人だったらどうしようもないよな」
「御免なさい、私一人じゃとても」
「そうだよな。家出だからな」
俺の方から家出という言葉を出してみせた。俺がわざと自分から出してやった言葉だ。
「一人じゃ寂しいよな」
「それで。駄目かしら」
「あのな」
俺は相変わらず煙草を吸い続けていた。そのうえであいつに答えてみせた。
「俺、御前の言うことで何か言ったことがあるか?」
「えっ!?」
「ないよな」
こう問い返してみせた。
「ないな。じゃあわかるな」
「・・・・・・いいのね」
「今からだよな」
静かにこいつを見ながら尋ねてみせた。顔はやっと上げてきているがまだ強張ったままだ。
「今から。街を出るんだよな」
「もうすぐ終電だから」
返事はこうだった。
「だから。いいわよね」
「今から行けば間に合うな」
俺は言ってやった。
「行くなら早くな。荷物は俺が持ってやる」
「あんたのはいいの?」
「ないものは買えばいいさ」
俺はこう言葉を返してやった。
「バイトしてるからな。金もあるしな」
「バイト。してるの?」
「当たり前だろ。じゃあ何で金あるんだよ」
また問い返してやった。強がりの言葉だったがこれは事実だった。
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