第T章:剣の世界の魔法使い
ヒースクリフ(後編)
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も敬礼を返す。先ほどまでエギルの店の二階でしょんぼりしていたアスナとは同一人物とは思えないほどしっかりしていた。
「さ、行こうか」
「お、おう」
アスナに促され、いよいよ《血盟騎士団》本部へと入る。
本部の中は、ランプの明るい光で照らされていた。白系統の色の壁紙のあいまってか、外ほどの冷たさは感じない。しかしそれでも、拭い切れないプレッシャーが漂っていた。
キリトがごくりとつばを飲み込む。やはり彼も緊張しているのだろうか。それもそうだろう。これから会うのは、この世界最強の男なのだから。
しかしキリトは、一応ヒースクリフと話をしたことがあるはずだ。一年は立たないが、十カ月ほど前に起こった《圏内事件》の折の事だ。本来、アインクラッドの町は《犯罪防止コード》というモノに守られている。これはその名の通り、犯罪を防止するコードで、このコード《圏内》では、窃盗や、他人を傷つけるPKができない仕組みになっている。また、このコード内に入り込んだ犯罪者プレイヤー…カーソルの色から《オレンジプレイヤー》とよばれる…は、村人型ガーディアンNPCに町から追い出されてしまう。「村人ごときが何だ」と思うかもしれない。しかし彼らを侮ってはいけない。このガーディアンNPC、一体一体がそれはそれは冗談のように強いのだ。殺されかけたプレイヤーを一人知っている。
そんな《犯罪防止コード圏内》で起こった殺人事件が《圏内事件》だ。結局は《圏内殺人》などは存在せず、巧妙なトリックを使った当事者たちの演技だったのだが、今から半年前に討伐された最凶の殺人ギルド《笑う棺桶》が出張る重大な事件となった。もちろん、一般にはラフコフの介入は伏せられたのだが。
その時に、キリトとシェリーナ、アスナ、そしてヒースクリフがことの解決に当たった。その時にキリトが連れて行ってくれた素朴な味わいの定食屋、《アルゲードそば》はシェリーナのツボにはまり、今もたまにそば(という名目の通称『偽ラーメン』)を食べに行っている。
あの時対峙したヒースクリフは、「厳格な博士」といった感じだった。攻略の時には赤い鎧を身につけている彼だが、あの時の普段着と思しきローブに身を包んだ姿は、つい昨日知り合ったばかりのこの世界たった一人の魔術師、ドレイクによく似ていた気がする。
「ついたよ」
筋力値の低いものなら音をあげそうなほど段数の多い螺旋階段を上りきった先にあったドアの前で、アスナが立ち止まって言った。
純白のドアの中央には、目がいたくなるほどの真紅の十字。よく見ると大理石のようなものでできているらしいドアには、細かい豪奢な彫刻が施されていた。アスナがそのドアをノックすると、答えを
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