第T章:剣の世界の魔法使い
ヒースクリフ(後編)
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となっていた。
「おお寒っ……シェリーナはいいなぁ。フード付きローブで。俺なんかこの一張羅……」
「嘘言わないでくださいキリトさん。そのコート地味に断熱効果あるの知ってるんですからね」
「おお、よく知ってるな……それにしてもこの町は寒々しいなぁ……」
キリトがあたりを見回す。雪が降り積もり、氷で凍てついたグランザムの鉄だけの町は、余計に寒々しく見えた。
「昔は三十九層にあった小さい家が本部だったのよ」
アスナが苦笑する。
アインクラッド第三十九層は、ほとんど何もない田舎町だ。第八層、第二十二層と並んで『のどかな街』であり、出現モンスターは非常に弱く、上層下層から住む為にやって来るプレイヤーが後を絶たない。特に三十九層はほかの層に一層増してやることがないエリアで……第八層にはいろいろな愉快なクエストが、第二十二層には釣りができる池がある……恐らくアインクラッドで最も人気が無い階層である。
「みんな狭い狭いって喚いててね。ギルドの発展は嫌じゃないけど……この町は、寒くてキライかな」
「俺も嫌だなぁ、こんな町に住むのは。なんであのカタブツはここを本部に選んだのか……」
キリトの愚痴に、シェリーナは思い当たる回答があったので答える。
「グランザムには大型の建造物が多いんです。ギルドホームなどが探しやすいだけでなく、高価な反面広いプレイヤーホームを購入することもできます。《血盟騎士団》はメンバーが多いですから、ヒースクリフさんはできるだけ広い建物がある階層を選んだんでしょうね。大きいギルドホームがあればそれだけ宣伝にもなりますし」
「確かになぁ。《聖竜連合》のあのドデカい本部は宣伝効果激大だしな……」
アインクラッド最大のギルド、《聖竜連合》は《最強》のギルドである《血盟騎士団》を一方的にライバル視している。このグランザムがあるアインクラッド第五十五層よりきっかり一つ上のアインクラッド第五十六層につくられた《聖竜連合》本部はまるで要塞のような威容を誇る。どう考えても《血盟騎士団》と張り合おうとしたとしか思えない。
「しっかしシェリーナ。お前そういうの詳しいよな。何でだ?」
「え!?え〜っと……」
言えない……キリトにどうかと思って、かつて城のように巨大なプレイヤーホームを買おうとしたことなんて言えない……!!
「見えてきたよ」
今日この瞬間だけはアスナに感謝しながら、シェリーナはアスナの指差す方向を見る。そこには、黒鉄色の尖塔。間違いない。《血盟騎士団》本部だ。入口には恐ろしく長い槍を構えた衛兵が二人、たっている。彼らはアスナに気付くと、ガシャリと鎧を鳴らしながら敬礼した。
「任務ご苦労」
アスナ
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