第T章:剣の世界の魔法使い
シェリーナ
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あの、続けてください」
シェリーナは顔を真っ赤にしてエギルに話の先を促す。
「お、おう。さっきもキリトの奴が《ラグー・ラビットの肉》持ってきてよ」
「それで!?売ったんですか!?」
「いや。そこにタイミング良くというか悪くというかアスナが来て、半分食わせてくれたら料理してやるって言ってよ。ちょっと向こうの護衛と一悶着あったんだが、キリトはアスナに《ラグー・ラビットの肉》を料理してもらうためにアスナの家に行った」
その瞬間。
シェリーナに一瞬謎のオーラが立ち上ったような気がしたが、瞬きする間もなくその気配は消え、いつものシェリーナに戻った。
「そうですか……」
残念そうに言うシェリーナ。
「なんだ?どうかしたのか?」
「いえ。《ラグー・ラビットの肉》はS級食材と言いますから、料理して食してみたいと思っただけです。キリトさんたちが食べてしまったのであれば仕方ありませんね……」
すでにそこには、先ほどまでの興奮した少女の面影はなく、普段の冷静沈着なシェリーナの姿があった。
「……シェリーナ?お前、キリトに懸想してやがるな?」
邪推を口にしてみる。すると、シェリーナはぐるりと勢いよくエギルに向き直り、キッと彼を睨み付けると烈火のごとく顔を上気させて怒り出した。
「ち、違いますッ!!断ッじて違います!!なんでそうなるんですか!!」
ふん!とほほを膨らませ、シェリーナは不機嫌そうな声を出す。
「もういいです。インゴットはほかの質屋さんに買い取ってもらいます」
シェリーナは机の上の《アシュレィの秘石》をつかむと、すたすたと店を出て行ってしまった。
「あ!!お、おい!!待てよ!!」
店の外に駆けだしたエギルは、フードをかぶりなおして足早に遠ざかるシェリーナを見て、今更ながらに己の大失態に気が付いた。
「くそぅ……いい交渉のチャンスだったってのに……」
《アシュレィの秘石》は超貴重なアイテムである。ここであのアイテムを買いとっての出費を補って有り余るほどのリターンがあったはずなのだが。
悔やんでも遅い。エギルはとぼとぼと店内に戻り、《closed》の看板を掛けた。
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