第T章:剣の世界の魔法使い
プロローグ
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レイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
GMアカウントは、奇妙なことばを発した。
『わたしの名は茅場晶彦。現在この世界をコントロールできる唯一の存在だ』
製作者にしてGMリーダー、茅場晶彦を名乗った顔のないGMアカウントは、全プレイヤーを驚愕させる言葉を発した。
曰く――――
ログアウトボタンが消失しているのは、このゲーム本来の仕様である。
このゲームはクリアするまで脱出不能である。
現実世界でハードである《ナーヴギア》を外そうとした場合、破壊しようとした場合に置いては、ナーヴギアに搭載されたバッテリーが、プレイヤーの脳を焼切る。
ゲーム内で蘇生手段は一切通用せず、プレイヤーがゲーム内で死亡すると、やはり脳を焼切られて現実世界でも死亡する。
現実世界ではあらゆるメディアでこのことを伝えており、プレイヤーの身体は最寄りの介護施設に送られること。
すでに忠告を無視してナーヴギアを破壊しようとした例が存在し、その結果、213人が犠牲になっていること……。
『最後に、諸君らにとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。アイテムストレージに私からのプレゼントを入れておいた。受け取ってくれたまえ』
茅場晶彦の言葉を聞いて、わずかな希望を抱いた全プレイヤーが、ストレージ内に追加されたアイテムを取り出す。
それは、なんてことないファンタジーチックな装飾の、ただの《手鏡》だった。
しかし。それがもたらした変化は絶大だった。
転移の時とよく似た白い光がプレイヤーたちを包む。光が薄れた時、そこに並んでいたのは……精悍な男女ではなく、コスプレをした滑稽な集団だった。
プレイヤーたちが、現実世界の容姿に戻っていた。
ナーヴギアの初期起動の時に、《キャリブレーション》と言って、自分で自分の体を触るという動作を行った。それこそが、この事象のための布石だったのだ。
プレイヤーたちの驚愕を無視し、茅場は続ける。
『諸君らはなぜ、と思っているだろう。SAOのゲームデザイナーであり、量子物理学者である私、茅場晶彦は、なぜこのようなことを行ったのだろうか、と』
そこで、茅場晶彦に初めて感情らしきものが生まれた。そして、彼は言ったのだ。
この世界を創り、観賞することだけが私の望みであり、すでにその望みは達成された、と。
『諸君らの健闘を祈る』
茅場晶彦の操る顔のないGMアカウントはそう言い残し、消滅した。
数瞬の沈黙。
直後、一瞬にしてプレイヤーから鋼鉄の城にとらわれた囚人となった人間達は、しかるべき反応を見せた。
「嘘だろ……何だよこれ、嘘だろ!
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