第T章:剣の世界の魔法使い
プロローグ
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《ソードアート・オンライン》という名前を聞いたことがないものはいないだろう。
巨大企業《アーガス》の作成した、世界最初のVRMMO。《フルダイブ》を実現させる《ニードルスシステム》の考案者であり、その対応ハード《ナーヴギア》の製作者である天才ゲームプログラマー、茅場晶彦が作り上げた、全世界のゲーマーの夢。
それが《ソードアート・オンライン》だった。
《アインクラッド》という名の全百階構成の鋼鉄の浮遊城を舞台に、上位の物も合わせると500にも上る《スキル》と呼ばれる特技を駆使し、プレイヤーたちは冒険を繰り広げる。スキルの中には戦闘系だけでなく生産系のものも数多く存在し、プレイヤーは文字通り《生活》することが可能であった。
それだけではない。この世界には、ファンタジー系で必須と呼ばれる《魔法》系のスキルが一切ないのだ。代わりに無限に近しい数設定された《剣技》を駆使して、プレイヤーたちは自分の武器と経験と勘だけを頼りに戦い抜いていくのだ。
そんな設定の数々が公開されていくにつれて、ゲーマーたちの熱狂はいやおうなく高まって行った。
2022年八月に募集されたβテスターは、総勢たったの1000人。当選者には一万本しか生産されない正式サービス初回ロット版の優先購入権が与えられるというから、多くのコアゲーマーが募集し、なんと募集人数は十倍の一万人に上った。
狭き門をかいくぐって、見事βテスターとなったもの達は、二カ月の間夢のような日々を送ったという。
正式サービス版は、発売の二日前からゲーム店に徹夜で並ぶ者が出てくるほどで、当日、オープンから五分近くで完売した店もあったらしい。
2022年11月5日、午後1時30分。ついにSAO正式サービスが稼働した。三十分近く前から待機していたプレイヤーも存在するほどだった。
多くのプレイヤーたちがこれからの夢のような日々に心を躍らせ、舞台となる《浮遊城アインクラッド》の地を踏んだ。
しかし……楽園は、突如として地獄に変わった。
ログアウトボタンが消失したことに、プレイヤー達は徐々に気づき始めていた。あれがないと、この世界から現実世界に帰還することができない。
午後5時30分。突然、全プレイヤーは第一層主街区、《はじまりの町》中央広場に集められた。誰もが困惑する中、突如上空に真紅のローブが出現する。βテスト時代、アーガスのスタッフが務めるGM達が着ていたローブだった。本来なら魔術師然とした顔があるそこには、何もない、ただ闇が広がるのみだった。
やっと運営側から連絡があるのか。多くのプレイヤーが、『顔がないGMアカウント』というモノに言い得ぬ不安を感じつつも、安どのため息を漏らした次の瞬間。
『プ
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