第四章
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第四章
「家に入ったらパーティーしようぜ」
「パーティー!?」
「ああ、特別にシェフ呼んでな、祝うんだよ」
有頂天でこう提案した。
「友達皆呼んでな。どうだよ」
「それが楽しみなのね」
「そうさ、アメリカン=ドリームを掴んだってことだからな」
機嫌よくそう言う俺はそれしか見えてはいなかった。もっともそのアメリカン=ドリームさえ本当のところは何もわかっちゃいなかった。
「折角だしさ。派手にやろうぜ」
「いいわね」
感情の篭らない声で応えてきた。
「それも何か」
「いいんだよ」
俺は疑うことなくそう返した。彼女のその言葉を。
「今そっちの準備もしてるからな、楽しみにしてくれよ」
「そうさせてもらうわ」
「何でも楽しめばいいんだ」
俺は能天気なままで述べた。
「何でもな」
この時が有頂天だった。けれど家が建った時。俺は地獄に落ちた気分になった。
「えっ!?」
俺は今の言葉が信じられなかった。何を言われたのかも。
「今何て」
「御免ね」
悲しい笑みで俺に応えてきた。その笑みは今でも覚えている。
「私、一緒に行けないから」
「おい、何でだよ」
俺は慌てふためいた声で彼女に問うた。問わずにはいられなかった。
「何でだよ、別れるなんて」
「私、そんなの欲しくないから」
俯いてこう言ってきた。俺には信じられない言葉だった。
「一杯のお金も。立派なお家もいらないの」
「じゃあ何がいいんだよ」
呆然としながらも彼女に尋ねた。
「そんなこと言ったら。何がいいんだよ」
「歌だけでよかったのよ、本当は」
俯いて言ってきた。そんなことは思いもしなかった。
「だから。やっぱり」
「じゃあお別れってことか」
「あのアパートじゃ駄目よね」
「馬鹿言うなよ」
やっと建てた家だ。俺の夢だ。何でそれが諦められるんだ。俺は本当にそう叫びたかった。今までやってきたことが否定されたようにさえ思えた。
「そんなこと、絶対無理だよ」
「それは私もなの」
やはり俯いて言ってきた。伏せた目がやけに痛々しい。
「だから」
「来ないのかよ」
「ええ。私ね、お金は最低限でよかったの」
また俺に言ってきた。咎めはせずに自分の考えだけを。
「そんな立派な程は。お金お金って」
「それでも一緒にいてくれたんじゃなかったのかよ」
「そうね、今までは」
それは認めてきた。
「今まではね」
「これからは。無理だっていうのかよ」
「ええ、やっぱり自分に嘘はつけないから」
また言う。もう言葉の一つ一つが俺に突き刺さるようだった。
「だから。一人で御願い」
「なあ」
俺はそれでも言った。ここまで来て諦められなかった。
「そのアパートも残すからさ。新しい家に」
「だから。そ
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