第三章
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邸やリムジンの話を聞いても喜ばず俯くばかりになっていた。俺達はこの時リビングのソファーに向かい合って楽しく酒を楽しんでいた。少なくとも俺はそのつもりだった。その時に塞ぎ込んだ彼女の顔を見たのだ。
「気にしないで」
「だといいけれどな」
訳を聞いても話さないのでそれに応えた、
「それならそれで」
「うん」
「御前の部屋もあるからよ。だから」
「ねえ」
そしてまた俺に声をかけてきた。その沈んだ声で。
「何だよ」
「このアパートも出るのよね」
今更といった感じの問いをかけてきた。
「やっぱり」
「だから家建ててるんじゃないか」
俺は笑ってそう言葉を返した。何でそんなことを言うのかわからなかった。
「そうだろ?だから」
「そうよね」
彼女はその言葉に頷く。やはり沈んだ顔で。
「御免なさい、変なこと聞いて」
「気持ちが沈んでるんだったら飲めよ」
缶ビールを投げた。これは昔から好きなので今でも飲んでいる。ビールだけは安くても別にいい、それが俺の考えだった。
「ほら」
「有り難う。けれど」
「いいから飲めって」
俺は笑ってそう返した。
「気が楽になるからよ」
「それでも」
「いいのかよ」
「御免なさい、やっぱり」
そう応えて缶を俺に戻してきた。それは仕方なく受け取ることにした。
「何だよ、面白くないな」
「気分じゃないのよ」
やっぱり沈んだ声で返してくる。
「どうしても」
「だったら無理強いはしないけれどな。それでな」
俺は彼女の気持ちに気付かずにまた言ってきた。ビールは俺が飲むことにした。投げたので泡が出たがそれも飲む。一本すぐに空けてから話を聞く。
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