第三章
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第三章
「そう思わない?もう充分お金は入ったし」
「これで充分って思ってたらアメリカン=ドリームじゃないな」
俺はやっぱり何も考えずにこう返した。この時は何を馬鹿なことを言ってるんだと心の底から思った。そうした意味で本当に俺はこの時馬鹿だった。
「だろ?だから豪邸に車に御馳走に」
「それだけあったら幸せ!?」
「ないのに比べたらな」
俺はまた言った。
「貧乏暮らしなんかに幸せはないんだよ。金が全てなんだからな」
「私ね、思うの」
彼女は目まで寂しくさせて俺に言ってきた。
「お金がなくても幸せになれるんじゃないかって。どうかな」
「戯言さ、そんなのは」
そうとしか思えなかった。
「そんなことを言っても。何もなりゃしないだろうな」
「そうかな、やっぱり」
「そうさ。何になるんだよ」
そう言葉を繰り返す。この時の俺には何もわからなかったから。
「一体全体」
「だったらいいわ」
目を伏せて言ってきた。
「私が何か思い違いしているのかも知れないし」
「そうさ。それよりもな」
ここで俺は上機嫌で話を変えてきた。
「何?」
「これ、聴いてくれよ」
そう言って彼女に俺の新曲を紹介した。ギターを鳴らしてだ。
「この曲どう思う?いいか?」
「そうね」
今度の俺の問いには静かに微笑んで頷いてくれてきた。
「いいと思うわ。ノリのいい曲で」
「この曲も売れるな」
そのことにまずは満足した。結局売れるかどうかしか考えちゃいなかった。いい曲も全てその為だった。幸せは金で曲じゃないと思ってしまっていた。いや、幸せが何なのかも俺はわかっていなかった。
「売れたらいよいよ豪邸と車だ」
「リムジン?」
「いいな。あれに乗るの夢だったんだよ」
上を見上げて恍惚となった顔になっているのが自分でもわかる。俺はこの時馬鹿でかいリムジンの中で微笑む自分を見ていた。
「それで行き来してな」
「今までのレストアしたバイクじゃなくて」
「豪邸が入ったらおさらばだな、運転手付きのリムジンがあるのにいらないだろ?」
「それはそうだけれど」
けれどやけに不満そうだった。俯いているのは顔だけではなかったからだ。
「それでもね。何か」
「まあ楽しみにしといてくれよ」
ギターを鳴らしながら上機嫌で言ってやった。
「御前も一緒だからな」
「ええ」
元気のない返事だった。その新曲は俺の予想通り爆発的に売れた。俺はその印税やテレビの出演料なんかで豪邸とリムジンを買えるだけの金が手に入った。ニューヨークの郊外にでかい家を建ててそこに住むことにした。
けれどそれと共に彼女はさらに塞ぎ込むようになった。俺はやはりその理由はわからなかった。
「どうしたんだよ、本当に」
「本当に何でもないから」
豪
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