暁 〜小説投稿サイト〜
神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第六十一章 覚醒せし宿り主《1》
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
う言葉が私にも聴こえました。信じられませんが、これでは十年前の生き残りだということに」
 新たな宿り主が生まれたよりも、二人にとっては十年前のある事件の方が頭を支配した。
 あってはならない事態。
 驚きと驚きが交差した。
 神の下に生きる人類にとって、あってはならないことが起きてしまった。
 何故、今生きている。
 日来の長。
 彼は一体何者なのかと、映画面|《モニター》に映る彼の姿が、ジスアムの脳に焼き付けられた。
「神のお告げを無視した大罪人か。ははは、一体この世界に何が起こっている。なあ、ライターム」
 問うたが、返事は返ってこなかった。
 不思議に思って、返事の無いライタームの方を向く。と、甲板から身を乗り出し、興味に釣られたように目を見開いていた。
 長い付き合いのなかで、そのような姿を始めて見た。
 長年探し求めていたものが見付かったように、嬉しさに浸るように柱を無我夢中で見詰めていた。
「あれが神の光か……! 素晴らしい、実に素晴らしい!」
 ライタームのその様子にジスアムは恐れを感じ、唖然と柱ではなく彼を見る。
 自分には解らない、特別な何かがあるのか。
 ただ目の前の物事に心奪われた友の、恐れを感じられずにはいられない様子に息を飲む。
 蒼天を射す一柱によって、彼らにもまたなんらかの変化が始まった。



 合成側印度国|《ミックサイド・インドランド》から神州瑞穂の奥州四圏が一つ、辰ノ大花の事態を映画面|《モニター》越しに眺める者がいる。
 制服をまとい、学勢であることは一目で分かる。
 周囲は緑に覆われ、微かな風の流れを感じる。
 深々と生い茂る木々のなか、たった一人の少女が映画面に夢中になっていた。
 懐かしく感じながら、少女は二印加奈利加|《トゥーエン・カナリカ》の国際中継により辰ノ大花から天に向かって現れた柱を見た。
「とうとう動きだしたんだね、セーラン君。なら私も動き出さないとかなあ。よろしく頼むよ――執神」
 誰に伝えるもなく、虚空に向かい言う。
 彼とはあの時別れたっきり、以降は会っていない。
 楽しみだ。また昔のように三人が集まる日が来るのが。
 胸を踊らせ、何時来るかも分からないその日の情景を思い描いた。



 山岳地帯に造られた、中西武国の学勢院。
 山々の向こうから、異常とも言える気配を放つものを少女は感じ取っていた。
 右目に包帯を巻いた、細身の少女だ。
 神の気配と同時に、彼の気配も強く感じる。
 宿り主となったからだろうか。
 するとなんの前触れも無く、右目が酷くうずいた。
 包帯からは不気味な赤い光が盛れ出し、同時に痛みが頭に走る。
 魔眼の副作用と言ったところだ。
 少女は右目を押さえ、青く晴れた空の下、一人呟いた。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ