第一物語・後半-日来独立編-
第六十一章 覚醒せし宿り主《1》
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付き易い。
迂闊だった。
あの村が、神のお告げにより滅ぼされることとなるとは。せめてもの救いは、この者に新たに宿ったことか。
●
『この子達をお願い。この子達を……貴方達で、護ってあげて。
お願い……この子達は、私達の宝物なの。
親を亡くし、将来苦労するこの子達に……手を貸してやってちょうだい……』
●
目障りな記憶だ。
人間など、神からすれば生物という一種でしかない。何万、何十万死んだところで変わりはしない。
我が宿り主……お前は、何時も誰かのために何かをする。だがな、それは何時か自身を滅ぼす。そう、我がそうだったように。その滅びは周りを巻き込み、取り返しの付かない事態を招く。
あの時の記憶の続きは止めておこう。言っても、今となっては仕方の無いことだ。
人間も神も面倒なものだと、口には出さず心中で思う。
仕方無い。しばし暇潰し程度に力を貸すのも悪くはない。
傀神は三本の足を動かし、その巨体を動かす。
数歩だけ、ゆっくりと。
傀神から見れば小さなセーランに顔を下げ、なおも眼下にあるが、下げたことにより少しは大きく見える。
「死んでも守りたいが死にたくはない。その言葉を忘れるな」
「ああ」
「よし、ならば力を貸そう。
我が力の一部……憂いを得る、悲しき葬送の苦しみを!」
突如として風は吹き荒れた。
セーランにとっては向かい風が、絶え間無く身体に当たる。
花は風に掻き回され、花びらを散らせ、共に光をばらまいた。風に押され、容易に立っていられない。
堪えることが精一杯で、他には何も出来無かった。
舞う花びらはそんなセーランの元へ、風を無視して舞い落ちてくる。それは光も同様だ。
落ちた場所はセーランの右腕。
付け根から少し離れた箇所からは完全に腕は無く、身に付けている制服が風によって乱れている。
一枚の花びらが、セーランの右腕へと触れた瞬間。激しい光を放つと共に、空間内全てを光へと包み込んだ。
無音で、何も告げずに。
白く包まれ、真っ白な空間へと変わる。
真っ白な空間のなかで、セーランは何かを忘れ、代わりに力が湧き上がるような感覚を得た。
無限に溢れ出てくる、とても身近にある不思議な力。
セーランが覚えているのは、その時までだ。
●
解放場は光に包まれた。
解放による光ではなく、青い、流魔による淡い青の光だ。
天地を支えるかのような一柱が天上まで昇り、それは昼間のなかであっても眩い光を放った。
世界の何処からでも柱は見え、青い光によって全てが照らし出された。
神々が葬|(はぶ)られる時と同じ、だがそれと同じような現象がもう一つ。別の時に起こる。
神をこの世から解放するのが葬りだとするならば、この世に
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