第一物語・後半-日来独立編-
第六十一章 覚醒せし宿り主《1》
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奏鳴が握ってきて、安心させるために微笑む。
この状況では不安もあるだろう。
そもそも、自分が彼女と同じ“宿り主”ということを告げてもいないのだ。
驚く顔見たさに隠してたわけだが、それが不安を誘うものだとしたら、ちょっとばかし反省が必要だ。
「傀神、て知ってるか」
「オオカミ?」
狼。
「いや、多分想像してるのと違う」
あまり知名度は無いが、一応神の一柱だ。
「そいつの力を借りる。少しばかし、手、離してもらっていいか」
掴まれたままでは、片腕しかないため準備が出来無い。
申し訳なさそうに奏鳴は手を離したが、名残惜しそうな様子だった。
片腕だけでは、やはり不便だと改めて思う。しょうがないと言えばしょうがないことなのだが。
奏鳴が手を離してくれたお陰で自由を取り戻し、彼女の手の感触が残ったまま準備に取り掛かる。
準備と言っても、大掛かりなことをするわけではない。ただ映画面|《モニター》を表示し、
「ちょっと待ってろ」
奏鳴に言って、映画面を操作する。
映画面は系術よりも構築速度が早いため、だが幾らかは解放されているが表示出来ている。
ノイズが画面上に走り、騒音が聴こえてきそうだ。
伝界|《ネット》に繋ぐと、流魔レベルで流魔同士の繋がりが弱くなり、互いを繋げられずにすぐさま流魔分解されるだろう。しかし、今回は伝界は使わない。
操作しているなかで、急にセーランの手が止まったのを奏鳴は見た。
探していたものを見付けたのだ。
映画面が奏鳴に背を向けているため、何が映っているのか分からない。
見えぬ画面に、セーランは人差し指を付けた。
ただ、それだけだったのに――。
●
空は暗く、地上は光っていた。
白く、青く。
見上げれば空は何処までも黒く、ずっと見ていると意識が吸い込まれそうな気がした。
星も何も無い空の下。地上には花が咲いていた。
十字を二つ重ねたような花。
その花が白い、青い光を放って、周囲を明るく照らしていた。ここではその花が、太陽となって全てを照らしている。
花は地上を埋め尽くす程、地平線の向こうまで咲いていた。
凹凸の無い、真っ平らな地上。
幻想的な空間に、一人の少年が立っていた。
セーランだ。
音も風も無い空間のなか、目の前の神を見ていた。
「久しいな、我が宿り主……」
と、神はセーランに挨拶をした。
白い毛並みで、犬のような、しかし何十倍もの大きさだ。
地上に咲く花を押し潰すように、前足も後ろ足も折り曲げて地上に座っている。
黄金の瞳をセーランに合わし、その姿を捕らえる。
昔の小さかった頃とは違い、一人の人間として成長した姿に、昔の彼の姿を照らし合わせた。
「よお、傀神。相変わらず寝てるばっか
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