第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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「ハンバーグは私も好きなんだ、食ってみたいぜ!!」
「律先輩も遠慮してくださいよ!!」
たしなめる梓を無視してずいっと進み出た。
「あのね、私、その…マコちゃんの手伝いをしたいっていうか…」
唯は指をつんつんしながら、恥ずかしげに囁く。
「え? いや、そんな、悪いよ…」
「でも! でも! 憂のしたこと、少しでも償えればな、と思うし…」
「まあ、」言葉はすました顔で、「誠君に直接手を下すのではなく、誠君の大事な人を奪って生き地獄に落とす、なんて言ってましたけどね」
唯は胸をつかれた。
床の湿り気がひざを這い上がってきた。
「言葉、それは…!」
誠が言葉を抑える前に、思わず我を忘れ、唯は皆を背にして駈け出した。
ドタドタドタ!!
リビングに、憂。
「あ、おねえ…」
パアンッ!
言いかけた憂の頬を、唯は思いっきり張っていた。
憂は椅子から、木の床にどさっと落ちる。
「何でそんなことしたの!?」唯の口調は、自分でも信じられないほど荒い。「そんなことをして、私のためになると思っていたの!?」
「…だって…伊藤さんが、お姉ちゃんを取っちゃうと思ったから」
左頬が赤くはれ、憂の目には涙がにじんでいる。
「そんなことはないよ! それに、私からマコちゃんを好きになったんだよ!! 私はこの人を好きになって、嬉しいんだよ!!
なのに、貴方は…罪のないいたるちゃんにまで、迷惑をかけて…」
「…ごめんなさい、ごめんなさい…」
うつむき加減で、声が震えている。
憂は、かがんでいる唯の胸にこうべを垂れ、すすり泣きはじめた。
昂った思いが、急にほどける。
唯はほほえみを浮かべ、憂の背中に手をまわした。
同時に、ちょっと信じられない思いがした。
今まで、妹を殴ることなんてなかったのに。
生まれて、初めて。
一同もリビングに駆けつけ、唖然としている。
「唯が、殴った…」
呟く律。
「田井中さん?」
「いつも唯って、憂ちゃんの世話になってばかりで、姉としての威厳も全然ねえのに…」
「やっぱり、好きな人ができると、人間って変わるものなんだろうな」
澪は平沢姉妹を見て、つぶやく。
「唯ちゃん…」
誠は呆然とするが、ふと思い出したことがあり、律に聞いてみた。
「そう言えば、あの人がいないですね」
「あの人?」
「キーボードが得意で、金髪で、眉がちょっと太い人」
「あ、ムギか! それがな、甘露寺に連れられて西園寺の所へ行ったきりなんだ。電話しても連絡とれねえし」
「世界のところか…。何しに行ったんだろう?」
「もとはと言えばあんたのせいでしょ」梓は詰る。「あんたと唯先輩がキスなんかするから、西園寺も図太ぼろに傷ついちゃったんじゃないの。ムギ先輩はその罪滅ぼし
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