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Cross Ballade
第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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の近く。…あ、そっちに行けばいいんだな。ありがとう」
 背後で澪の声を聞きながら、唯は直感の導くままに走っていた。


「やれやれ、持って帰っちまったよ…」
 風が少しやんだ中。
 自宅の玄関の電気をつけながら、泰介はつぶやいた。
 黄色く光る部屋に、無数のドラボンゴールのフィギュアが浮かび上がる。
 さわ子の左腕を肩にかけながら引きずり、学校から家まで連れてきた。
 彼女は弱っているものの、怪我も病気もないので、救急車を呼ぶこともできず、どさくさにまぎれて連れてきてしまった。
 弱みに付け込んだ感じである。

 さわ子は、
「ああ…止さん…もっとして…」
 相変わらずうわごとを呟いている。
「あー、どうしよ…まあ据え膳食わぬは男の恥ともいうし…1回だけなら…」
「たーいすけー、なーにやってんのー?」
 廊下の奥から声がして、彼の姉が玄関までやってきた。
「あ、姉ちゃん…」
「あら、誰その人。なかなかきれいな人だけど、怪しい人じゃないよね」
「って、祝福してよ!」泰介は悲しくなり、「学祭中なんだから、彼女ができてもおかしくないでしょ」
「はいはい、私は美人は信用しない性質なんで。どこの人?」
「どこ、と言われても…」

 直感でさわ子と思ったが、それを証明できるものは何一つ持っていない。
 もはや破れかぶれになり、さわ子の手持ちのバッグをあさり始めた。
「って、人のバッグを勝手にほじくるな…あれ?」
 姉は、バッグがら飛び出た一つの写真に目が行き、拾い上げる。
 檜の部屋をバックに、桜ケ丘の女子生徒5人とさわ子が、楽器を持ってそれぞれウインクしながら写っている。

「この人、桜ケ丘の人…?」
「あ、そ、そうだよ」泰介は、真ん中に写っている唯を発見し、「あ、それにこの真ん中の子、平沢さんっていうんだけど、誠といい仲なんだよ」
「伊藤君がねえ…なかなかかっこいいものね、あの子。あなたとは違って」
「一言余計だぜ」
 やっと怪しいものじゃないと、信用してもらえたようだ。
 鞄をさらに探ると、身分証明書も見つかった。
『桜ケ丘高校 音楽教師
山中 さわ子』
 緑色のカードに、はっきりと書いてある。
「ほら、桜ケ丘の先生だよ。怪しいものなんかじゃないだろ。せっかくだからさ、今晩この人を俺ん所に…あ」
 ぐったりしているさわ子を、姉は泰介から奪い、背におぶって、
「私が預かります。あんたと2人にしたら、何するかわからないし」
「待ってよ! 俺が連れて来たんだし、いいだろ!? それに榊野で童貞卒業しねえと恥ずかしいし!!」
 わめく泰介だが、どうすることもできない。


 古びたマンションの、銀のドアの前で、唯と澪は、息を切らして停止した。
 後から律と梓も追い付く。
 恐る恐
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