第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
[5/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
エプロンをかけて、言葉と誠は、今晩の料理を作り始めた。
誠は慣れた手つきで、玉ねぎをみじん切りにしていく。
「いたっ!」
「言葉?」
言葉は、どうやら指を切ってしまったらしい。
「マキロンと傷バンならあるけど、使う?」
誠がきくと、言葉は大きな目で、じーっと彼を見つめ、
「傷、なめてほしい、です…」
「え…。恥ずかしいよ。それにかえってばい菌が入るだろ。」
「ううん。なめてほしいです…」
誠は困り果て、
「まいったな…」
と呟きながらも、切り傷のある言葉の人さし指に顔を近づける。
「そのまま、目を閉じて、なめてほしいです」
ずいぶんと注文が多い。
しぶしぶながら頬を染めて、誠は目を閉じ、言葉の傷口にしゃぶりついた。
パシャッ
耳元で、カメラのシャッター音。
「?」
誠は思わず目を開いた。
言葉は後ろ手で何かをしまいながら、
「なんでもないですよ」
「そう…?」
気にしながらも、彼は自分の仕事を進め、あっという間に野菜のみじん切りを終わらせた。
続いて、セイロの横でハンバーグをこね始める。
言葉はそれを横目で見ながら、
「そういえば、ハンバーグにセイロって使わないですけど…」
誠はにっこり笑って、
「これはデザート用。何ができるかはお楽しみ」
そう言いながら誠は、ひき肉に玉ねぎを混ぜ合わせ、ハンバーグを小さく、沢山つくる。
何とか足りるようだ。
「ずいぶん数が多いですね」
「ああ。憂さんもいるし」
「わざわざごちそうするんですか…あんなことされても?」
まあ、そうではあるが…。
あの後の落ち込みようを考えると、ある意味普通の人間かもしれない。
まして、あの子の妹さん。
少なくともあの顔を見ると、何となくほおっておけない。
「電話と、メール…」言葉が、うつむき加減になる。「平沢さんや、西園寺さんから来ても、取らないでください」
「え、なんで…」
「着信拒否にしてください」
彼は唖然となる。
なんだか、自分と付き合うと、みんな同じになるなあ。
「そんなこと言われたって、唯ちゃんと連絡がとれなきゃ、唯ちゃん達はたどりつけないだろう」
「私が秋山さんと連絡を取り合いますから、大丈夫ですよ」
いつになく、真剣な目つきの言葉。
「それは、できないよ…」
「え…」
「前に世界にそう言われて、挙句とりみだして分かったんだ。
俺にとっては、世界も唯ちゃんも、もちろん言葉も大事なんだって」
「そんなの…」
「世界に張られてさ、唯ちゃんにあんなこと言われて、すっごくぽっかり穴が開いた気分になってるしさ」
「……。
でも、平沢さんにはもう、近づかないほうがいいと思いますよ」
言葉はそれ以上何もいわず、何かを考えて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ