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Cross Ballade
第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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が憂ちゃんを取り押さえて、妹さんも無事らしい」
「待って!! どこ行けばいいの?」
「原巳浜駅から、歩いて5分ぐらいのところらしい」
「そうか…いそごう!!」

 マコちゃん、怒ってるだろうな。
 唯は心が痛くてしょうがない。
 ガン! ガン! ガン!
 急に壁から大きな音がしたので、そちらを向く。
 リビングで、梓がガンガンと壁に頭突きをしている。
「い…い…いいかげんにしろォォォォォ……!!」
 男のような低い唸り声。
 思わず悲鳴を上げながら後ずさりする澪を、律と唯は抑えて、
「梓こわいぞ…」
「そんなにいやなら、あずにゃんは行かなくてもいいってば…」
「いいです、行きますから」
 むくれた表情で梓は従う。

 律は携帯を取って、ムギに電話をするが、
「どうしたんだ、ムギの奴も…連絡が取れない…」
「とりあえず、私は行く!」
 リビングを飛び出す唯を、
「まて、分からないだろ!? 私が道を桂に聞くから」
 澪が追いかけた。


 整理されているが、小さな電球がともるだけの簡素なリビングでは、4人がけのテーブルに丸椅子が追加され、5人座れるようにセッティングされている。
 下座で憂が抜け殻状態でうなだれている。斜向かいの席でいたるは、心と指遊びをしている。
「ねーねー、おねーちゃん、おねーちゃんもあそばないのー」
 いたるが屈託のない笑顔で憂に問うので、心はぎょっとなり、
「お、大人しくしててよ…この人には関わらないほうがいいって…」
「なんでー?」
「いいから。さ、遊ぼう」
 いたるは、うつむきっぱなしの憂を気にしながらも、心と再び遊び始めた。

 そんな様子を、奥のキッチンで言葉と誠は見ながら、
「…なんか、本当に何も覚えてないみたいですね…」
 言葉は顔をしかめて、呟く。
「どうやら、あまりに急だったみたいでさ。その時の記憶はないみたいなんだ。
まあ、凶器はとりあえず預かったし。まあ大丈夫だろう」
 ユニパックに入れた包丁を見て、誠は安堵の表情で材料を用意する。
「ずいぶん、落ち着いているんですね」

 一時の沈黙。
 驚いていないわけではないが、今日1日は様々なことが起こりすぎて、頭が鈍感になってしまっているのだろう。
 それに…なんといっても、この子は唯ちゃんの妹。
 もうすこし寛大になっても、いい気がした。

「驚いてないってわけじゃないけど…まあ、こうなってもしょうがないかな、と思って。
憂さんの言う通り、二股も三股もかけていた事実は否定できないさ。挙句唯ちゃんにキスされた時も、拒めなかった」
「あれは平沢さんから、勝手にキスしてきたんでしょ? しょうがないじゃないですか」
「…そうかもしれないけど、唯ちゃんの妹だしね。」
「そうですか…
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