暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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よ!!」
「梓…」
「澪先輩! あんなに榊野に行くの嫌だったじゃないですか!! どこに行っちゃったんですか、あの時の澪先輩は!?」
「ま、住めば都って奴だろ」律は腕組みしながら、「成長したと思うぜ、澪も。その荒んだところに行っても動じなくなったんだからよ」
「おねがいですからー! 私は本当に…!」
 さわぎたてる梓の隣で、唯はうつむいたまま、無言になっている。
 今更自分が行っても、もう誠は…。

「唯」
「澪ちゃん」
 澪は、唯の心を読みとおしたかのように、
「伊藤のこと、あきらめてないんだな」
「…そうだよ…」
「なっ!?」ますます梓は血相を変えて、「何であんな奴が好きなんですか!? 二股も三股もかけるような、」
「梓!」澪は梓をたしなめ、「唯、あの時、『ごめん』って言ってたから、てっきりあきらめたのかと思ってたぞ」
「あの時は、頭の中を整理できなかったから」指をつんつんしながら、唯は言った。「あの時はあの人が傷ついているのを見て、あの人の汚点に気づいたけど…。
やっぱ、忘れられないよ」
「…なんだったらさ、唯も榊野に行ってみたほうがいいと思うんだ」
「いいの!?」
「いいのって、それは個人の自由だと思うぞ」
 澪は憐れむような目つき。それでも気遣っているのだと、唯は判断している。

「私はあくまで反対です」梓は唯の肩をつかみ、「あんなところに行って、あんな野郎に会ったら、唯先輩はどうなるか!」
「あずにゃーん、あずにゃんはマコちゃんに直接会ったわけじゃなくて、又聞きで評判を聞いているだけでしょ。マコちゃんのことわかってないよ」
「…一応、あの時の修羅場は横で聞いていました、甘露寺と」
「つーか澪」律は耳をほじくりながら「んなことしたら、桂が黙っちゃいないだろう」
「それは、そうだけど…」澪は困惑顔になり、「桂には以前話したけど、私は唯の友達でもあるし、唯の好きなようにさせてやりたいんだ」
「って、こういうのはやめさせるのが真の友情でしょ?」
「そーだそーだ、それにそんなあいまいな態度じゃ、伊藤になっちまうぞー!!」
「それは伊藤に失礼」

 ふとその時、澪の携帯から着信が届いた。
「はい、秋山です…桂…? え、はい…なんだって…!?」
 受話器を取った澪の表情が、どんどん強張っていく。
「あ、うん。ちょうどそこに唯もいる。わかった。すぐ向かうから。 場所は…原巳浜(はらみはま)か…ああ。桜ケ丘駅から乗れば30分ぐらいだと思う。ありがとう」
 電話を切って、切羽詰まった表情で、
「憂ちゃんが、伊藤の妹さんを人質にとったそうだ。唯から手を引かなければ、妹さんの命を奪うって…」

 普段温厚な唯の顔から、血の気が引いて行った。
「憂…!? どうして…!?」
「幸い、通りかかった桂
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