第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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言葉が2人に見せたのは、誠が彼女の指にキスをしている写真。首から先しか映っていないが。
…というのは見せかけで、先ほど彼女が怪我したときに、誠が傷をなめているところを撮ったもの。
「「……!!」」
「誠君、私の指をこんなに夢中になって吸うんです」
「そんなの…」
世界は目をそむけつつ、でも声は明らかにテンションダウンしている。
「指にキスって、王子さまがお姫様によくやるよね…」
唯はショックというより、妙に興味深げな表情になった。
ちょっと変わったキスだと思っている。
言葉は浮かない表情になる。
やはりこれだけでは、不足か。
唯は、元気のない世界と、少しがっくりしたような言葉の顔をかわるがわる見て、思わず言ってしまう。
「ねえ…西園寺さんも桂さんも、『勝っても負けても遺恨なし』ってできない…?」
張りつめた空気が、さらに怪しくなった。
「…それができないから、こうやって修羅場ってるんじゃないですか…」
世界は、思わず呆れてしまった。
「ま、まあとりあえず、マコちゃん待ってるからさ、とりあえず食べようよ」
唯はにっこりと笑う。
世界も、思わず顔を赤らめた。
「…とりあえず、田井中さんじゃないけど、腹を割って話したほうがいいかもしれませんね」
廊下を走る唯を背に、世界は、さりげなく言葉に切り出す。
「…なんとなく、分かる気がする」
「え?」
「誠が、この人に惹かれていった理由が」
言葉の表情が、さらに曇った。
「なんというか…あの悪意のない笑顔…。あれを見ると、こっちまで心が洗われるような気がして…」
「そうですか?」
「え?」
「平沢さんなんて、駄目です」
「……」
この人の意固地っぷりも、相変わらずというべきか。
「それにしてもよ」律はブタ顔のアンマンにかじりつきながら、「結局振り出しに戻っちまったじゃねえか。どうすんだよ、伊藤」
もっともだ。
自分も相変わらず決めることができないから、同じ賽の目を繰り返している。
「必ず決着は、付けるつもりです。…あれ、いたる、心ちゃん?」
2人とも、ブタ顔のあんまんをみつめたっきり、一口も食べていない。
「…これ、かわいそうで食べられないよ…」
「あはは…そうだね。じゃあ、持って帰るのもいいかもね」
「いたる、おとーさんにたべさせたくない、これ」いたるは不満げだ。「あ、そうだ。
おにーちゃんにあげる」
「はは、ありがとう。」
満面の笑顔で、誠はいたるの頭をなでてやった。
それを見つめる澪、律、梓。
「…やっぱり、悪い奴じゃないと思う、伊藤は」
澪は肩をすくめて、律と梓に話す。
「澪…」
「澪先輩…」
まばたきする2人に、澪は続けた。
「ちょっと優柔
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