第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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は誠君を取ろうとした。同じようなことが、また起きないとも限らないんです」
「……」
「節度ってのを、明らかに破ってるでしょう、平沢さんは…」
「…そうだけどな…」
言葉の疑りの目が、今度は澪に向く。
「秋山さんも…どうして、止めないんですか…?」
思わず澪はそむけ、
「私は…唯の気持ちも大事にしたいし…。正直、伊藤がもう少しはっきりしてくれるといいんだけどな…」
「誠君は、優しすぎますから。」
「はあ…」
「その分は私が、誠君にちょっかいを出す女の子を近づけないようにしないと。
もう少し平沢さんは、許そうかなと思ってたんですけど」
苛立つ言葉の表情に、澪はひやりとしながら、
「頼む…唯はそんな奴じゃない…」
やがて唯と誠が、キッチンから顔を出す。
「みんな! 食後のデザートだよ!!」
緑の花で彩られた皿の上に乗っていたのは、10センチくらいの大きさの、ブタ顔の饅頭が何個も。
「ひょえーっ!!」
「かわいー!!」
律と心がすっとんきょうに声をあげる。
「すごい…」
それまでうつむいていたばかりの憂が、思わず饅頭を持ち上げた。
押麦と黒ゴマで、つぶらな目がつけられ、細く伸ばした生地で鼻がつくられ、両脇に耳がちょこんとでている。
白い生地から、ふわふわ湯気が出ている。
「これでも中身はアンコ。名づけて、『こう見えてアンマン』」
ニコニコしながら、誠は発表する。
「うわ、フェイクかけるのが憎いな…」
「伊藤さん…私も食べていいんですか」
おどおどした表情で、憂は言う。
「いいよ」
「ホント! ありがとうございます!!」
「いいですけど、残して下さいね」心がませたことを言う。「お姉ちゃんや、秋山さんもいるんですし」
「はい…」
みんなで、むしゃむしゃとアンマンを食べ始めた。
唯と誠は、それを微笑みながら鑑賞し、
「可愛く出来たよね」
「そうだねー」
にっこりと笑う唯。
それを見て、誠は今までの唯の表情を、くるくると思い返した。
必死に謝った時の、あの泣きそうな顔。
憂さんに平手打ちした時の、あの真剣な表情。
そして、心からの笑顔。
全てがいちずで、穢れがない。
汚したくない。
心から誠は、そう思った。
「本当にありがとね! マコちゃん!!」
唯は誠の首に腕を回そうとして…。
両腕をつかまれた。
続いて、横でえへんえへんと咳払いの声。
言葉が、2人の横にいた。
唯の腕を掴んで。
澪も不安げな表情で、彼女の隣にいる。
「平沢さん…少し2人で、話しましょう」
低い声。
唯と言葉がでていったリビングで、澪は、
「お互い譲れないみたいだな…」
誠は無言で、あらかじめ皿に盛っていた
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