第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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のために、行ったようなもんなんだからね」
「…そうなんだ…」
「私はお暇して、ムギ先輩たちのところに行ってくる」
踵を返す梓に、
「まてまて、せっかくだから、梓は一緒に楽しもうよ。あたしが行ってくるから。正直西園寺はあたしも気になるしよ」
律が止める。
「そうですか…」誠はちょっと、残念そうな表情になった。「じゃあ、唯ちゃん達は食べる?」
「うれしい、ありがとう!!」
気持ちの浮き上がった唯は、思わず誠の腕に抱きつく。
思わず顔を赤らめる誠。
と、
ぐいっ!
唯の腕を、言葉がすごい力で、引き離していた。
2人に向かう、冷たい眼光。
「「……!」」
すまんねと、澪が言葉に謝る。
最後に残った律と梓。
ふと、梓の携帯から着メロが流れ、それを取ってみる。
「ん…?」
「どしたあ、梓」
「清浦から、メール。…西園寺がこっちにきてる!?」
「なんだって? …わかった、私もここに残る」
街灯が暗い夜道を、明るく照らす中。
自宅から最寄りの駅まで、世界は一心不乱に走り続ける。
道行く人は、大学のアベックもいれば、仕事帰りのサラリーマンもいる。
それをかき分けかき分け進み、ようやく駅にたどり着いた。
すると携帯から、
『♪抱きしめてミスター つかまえてミスター♪』
KARAの着うた。
「誠!?」
蜘蛛の糸のような希望にすがり、世界は画面も見ずに通話ボタンを押した。
「おいーす、さーいおーんじー。律だぜー」
間の抜けた声が、耳に。
「田井中さん…?」
急に気持ちがしぼむ。
「梓から聞いたよ。伊藤とのところに向かってるって?」
「何で知ってるんですか?」
「清浦が梓にメールしてきてな、それで分かったのさ。
あんたもこりないねえ…浮気した元彼を慕って、また出直してくるなんて」
「…そんなの、どうだっていいじゃないですか…人の恋愛に、いちいちちょっかい出さないでください…」
律の言葉に、多少癪に触りながらも、ゆっくり世界は答えた。
「いや、実はあたしたちもちょっとした用事で、伊藤ん所に来てるんだよ」
「な? どうして?」
「どうも憂ちゃん…あ、唯の妹ね。そいつが伊藤の妹を人質にとって、唯から手を引けと伊藤を脅したそうなんだよ」
「…そうなんですか? 平沢さんの、妹さんが…」
信じられなかった。
「幸い、桂が憂ちゃんをおさえて、一件は落着したけどな。伊藤の奴、やってきたあたしたちもついでに誘って、みんなで食事会をすることになったのさ」
「そうですか。誠も、よく平沢さん達を誘いましたね」
「そんだけ伊藤も、唯が好きなんだろ。それに桂や澪もいるから、望みは薄いと思うけどな」
ごもっともである。
さらに気持ちが、しぼんでいった。
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