第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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れる?」舌っ足らずな口調で話しかける。「あれ、このおねーちゃ、だれ?」
いたるが指さしたのは、憂。
「あ…それは…」
憂が襲ったことを、覚えてないのだろうか。
「いたる…何も覚えてないのかい…?」
「うーうん、おにーちゃんのおうちにきたら、きゅうにあたまがいたくなって、それっきり」
どうやら、あまりに唐突だったので、その場の記憶がないらしい。
「この人はですね…」
言いかける言葉を誠は制し、
「この人は俺の親友の妹さん。あ、それとこっちは、俺の友達の…」
「彼女です」言葉は遮る。
「頼むよ、恥ずかしいから…」
顔を赤らめる誠に、言葉は
「いいじゃないですか」と制して、「いたるちゃん、よろしくね」と腰をかがめ、いたるの頭をなでる。
「はーい、よろしく!」
いたるの笑顔に、誠も思わず表情をほころばせた。
それを見て、言葉の表情が急に曇る。
「言葉?」
「誠君…正直…今の誠君の笑顔を見てると…」
「言葉…?」
「…平沢さんの影が、ちらついてならないんです。
誠君の笑顔が、そのまま、平沢さんの笑顔に見える」
「そう? 唯ちゃんの笑顔、やっぱりいいよな」
にっこりして、誠は家へと入っていった。はしゃぐいたるの手を引いて。
憂はうなだれたまま、その後に従う。
「何してるの? お姉ちゃん、入ろうよ」
心が言葉に声をかけるが、
「…誠君の彼女、私だよね……」
ぼそぼそと言葉は呟く。
「お姉ちゃん?」
「あ、ごめん、心。入ろうか。」
にっこりと笑顔を見せて、彼女も心と一緒に家へ入る。
そして携帯を取り出し、澪に電話し始めた。
風がゴトゴトとなる中。
整理された部屋。つややかな木の床。
丸いテーブルに向かい合うように、ソファーが置かれ、そこに放課後ティータイムが並んで座っている。
ここは唯の家のリビングだ。
ムギを除いた皆で、明日のことについて話し合っていた。
純はすでに帰ってしまっている。
「とりあえずよ、みんな自由行動でいいんじゃね?」
っけらかんと、律は結論を出した。
「そうはいきませんっ!」
梓はいかにもヒステリックだ。
「何でだよ」
「あんな荒んだところ、私も先輩達も行ったらどうなるか! 私、本当に先輩達が心配なんですよ!!」
「いーじゃんか、彼氏づくりには持ってこいなところだしよ」
律はへっへと笑う。意に介さないようだ。
「それに私も」澪が穏やかな口調で、「伊藤と桂のことが気になるし。ちょっと2人を見てみようと思うんだ」
「…マコちゃん…」
ポケットの中のものを気にしながら、唯は聞こえないように呟く。
梓はさらに顔を青ざめ、
「ますます嫌ですよ!! もう伊藤や桂に近づくのはやめてください
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