帝国基地攻略作戦
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全滅です」
「報告……」
次々と上がる報告にメルトランは耳を塞ぎたくなった。
もはや良い報告はあがってこず、負けという言葉が脳裏をよぎる。
震えそうになった足を、メルトランは両の手で押さえた。
震えている場合ではない。
「思えば……」
小さく呟いた言葉に、無線兵が無線を手にして言葉を待つ。
マクワイルド少尉の進言を無視した事が間違っていたのかもしれないな。
言葉に出さず、メルトランは自嘲を浮かべた。
思いだすのは着任当初にアレス・マクワイルドが進言してきた意見だ。
装甲車が非常時に手動切り替え装置。
意見だけではなく、実際に小隊に配置された装甲車を使って、可能であると方法まで示してきたが、クラナフ大佐とメルトランは、即座に進言を却下した。
今まで問題があったわけでもなく、逆に手動に切り替えられるようであれば、容易に敵に奪われる可能性があるというのが理由だった。それに対して、マクワイルドは何と言っただろうか。
『奪われる事態になるのでしたら、もはや脳波認証など無意味ではないですか。今まで問題が起こっているから大丈夫なのではありません。問題が起こる可能性があるから、危険なのです』
生意気な小僧だと一笑したが、今では笑うことも出来ない。
事態はアレス・マクワイルドが危惧した通りになっている。
手動に切り替えられれば、このような事態にも対処することができただろうか。
せめて、その方法をメルトランが理解していれば違っただろう。
今からそれを聞くには、あまりにも遅すぎる。
「中佐」
側近――レティル少佐が静かに言葉を促した。
「すまない。全軍に撤退命令を出せ――装甲車は捨ておけとな」
「し、しかし」
「動かないものにこだわっても仕方ない。それよりも先に敵基地を占拠出来れば良かったのだろうが」
敵からの攻撃は強くなり、こちらはもはや組織だって防衛できていない。
今から敵基地を奪うという選択肢は不可能だ。
それがレティルにも理解できたのだろう、レティルも頷けば無線兵が言葉を口にする。
「全軍に命令を送る。全部隊は退却せよ――繰り返す、全部隊は退却せよ!」
メルトランの言葉で、騒々しくなるのはメルトランのいる場所も同様であった。
撤退のために必要なものを抜き出し、同盟軍基地へと伝達を開始する。
装甲車が動かなくなった原因を求める基地に、無線兵が今はそんな場合かと怒鳴りつけていた。それと並行して撤退のための作戦を練り、現場へと伝達する。
動き始めた指令部を見ながら、メルトランは息を吐いた。
こちらの退却を見るや敵からの攻撃は一層に厳しくなった。
よほど期を見るに敏感なものが敵にいるらしいと、メルトランは苦笑する。
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