帝国基地攻略作戦
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立ち尽くす装甲車に突撃、次々に装甲車が炎上する。
極寒の大地にすら炎上する熱が伝わる。
視界に映る赤が、白い大地を染め上げていた。
ある者は炎上する装甲車から逃げ惑い、ある者は装甲車とともに炎上する。
瞬く間に悲鳴が重なった。
「な、何が起こっている」
その光景を呆然と見下ろしながら、メルトランは命令を口にできない。
本来であれば何が起こっているかを考えるよりも先に、現状を認識して逃げろと伝えるべきであったのだろう。突然の事態に思考がついていかない。メルトランが判断に迷う間にも、次々と敵基地の前で同盟軍の兵士は倒れていた。
「中佐!」
「なんだ」
「全ての装甲車が一斉に機能を停止。脳波認証システムが敵からの妨害を受けた模様です」
「なんだと……そんな事ありえるわけがない」
メルトランが呟いたのも無理はなかったのかもしれない。
彼がこの大地で戦って――あるいは今までの戦場で脳波認証システムが妨害された事など聞いたことがなかった。
もしそんな事が可能であるなら、過去に問題となっていただろう。
なぜ、このタイミングで。
『第四中隊、壊滅!』
『第五中隊長の戦死に伴い、エルノア中尉が指揮を代理します』
『第三小隊、撤退します』
無線兵が持ってきた無線からは、次々に悲鳴に近い言葉が漏れ聞こえた。
統率など取れていない。
ただ闇雲に叫ぶ様子に、メルトランは怒りを覚える。
「落ち着け。あと少し、あと少しなのだ!」
「はっ」
呟いた言葉に、無線兵が気を利かせて、メルトランの言葉を無線に入れる。
しかし、響いてきたのは絶叫に近い言葉だ。
『どうすればよいのですか!』
響いた言葉に、無線兵はメルトランを見る。
答えられない。
再び振り返った大地では、敵の正面から装甲車が姿を見せていた。
+ + +
「もはや敵に身を守る者はない。攻撃を仕掛けろ!」
敵の装甲車が止まって、戸惑っていたのは帝国も同様であった。
いきなり全部隊が停止したのだ。
それまで押し込まれていた状況であれば、罠かと疑ってしまう。
呆然としていた兵士の心を動かしたのは、声だ。
吹雪や敵の悲鳴をぬって響き渡った声に、誰もが振り返る。
視界の端で金色の髪を揺らす少年がいる。
まだ自分よりも遥かに若い――だが、その声には力があり、心を掴まれる。
その場にはまだ少尉であるラインハルトよりも上官の姿はあった。
しかし、誰もが言葉を失い、彼の言葉を信じた。
「突撃だ」
「勝てる」
「装甲車を前へ!」
一瞬の硬直の後に弾けるように兵士達が動き始める。
いまだ鉄屑となった装甲車の周囲で戸惑う同盟軍よりも先に攻撃が開始された。
撃
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