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さんすくみっ
第一部
第三幕 畜生叫ぶ
第三幕 畜生叫ぶ
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ゴリラと、あの『呪い』の声?
「では何故!?」
「じゃあ、訊くが、お前はどうするべきだったと言うんだ?」
「最後まで隠し通すべきだった! そうすることで、彼は幸せになれた筈なんだ!」
「……ちげぇ」
「何が違うと言うんだ!」
「ケッケッケ。全然ちげぇんだよゴリラ。てめェ何年教師やってんだ。そんな仮初めの幸せが本物である筈がない」
「本物……だと?」
「ケッケッケ。ああ。本物の幸せっつーのはな、乗り越えて初めて手に入るものなんだ、逃げに逃げて手に入れたぱっと見の幸せに価値なんかねえよ」
「別にあいつは逃げていたわけではない!」
「逃げてはいねぇだろうが、オレ達が気づかれず、逃げるように仕向けるのはおかしいだろう」
「だからって──」
「そろそろあいつが起きる。ピロートークは任せるぜ、ケッケッケ」
「……くっ!」
 ゴンっという壁を殴る音。……ったく。
「静かにしろよゴリラ」
「……お前」
 ゴリラが俺が起きたのに気づいたらしい。
「いちちちち」
 俺が痛む後頭部を抑えながら上半身を起こすと、俺の下半身にもたれかかって胃袋が寝ていた。なんでてめェも寝てんだよ。あと、股間が近い。どけ。
「……えらく冷静だな?」
「ああ、お陰様でな」
「…………そんなわけ……ないか」
 おや? 気づかれたらしい。はは。流石文系、僅かこれだけの台詞でわかるのね。
 話の内容からして、俺の頭を殴ったのはこのゴリラらしい。よく頭蓋骨無事だったな、俺。
「訊いてもいいか?」
「…………なんだ?」
 俺は可能な限りの笑顔を作る。
「人間が飯を食う時、『いただきます』と言って、全ての犠牲に感謝と謝罪をする」
「…………」
「で、仮に人が人を殺す時は『いただきます』でいいのか?」
「…………違う」
「『ごちそうさま』?」
「……違う」
「じゃあ『ありがとう』か?」
「違う!!」
 ゴリラは叫ぶ。
「じゃあ、なんつったらいいんだよ?」
「何を言ってもダメだ!」
「…………知ってるか?」
「…………何をだ?」
「あのおっさん、俺のガキを殺してあいつを持って行った時、特に何も言わなかったんだ」
「うぐ……」
「馬鹿面下げてあいつを見ていた奴等もそうだ。少なくとも俺の心にはその誰からも『いただきます』も『ごちそうさま』も『ありがとう』も聞こえなかった。あれなんだろ? ちゃんと言ったら、俺達犠牲者には伝わる魔法の言葉なんだろ?」
「………………」
「もう一つ質問だ。人間は人間を殺していいのか?」
「…………ダメだ」
「ヘビは人間を殺してもいいのか?」
「ダメだ!」
「………………じゃあ」
 俺は、ゴリラを睨む。
「じゃあなんで人間は俺達ヘビをあんな風に殺してもいいんだよぉおおおおおお!!」
 叫びながら
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