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チャイナ=タウン
第六章
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いいよ」
 しかし俺はそれを受け取らなかった。
「どうして?」
「僕が君にプレゼントしたものだからね。だからいいよ」
「いいの?」
「うん。だから気にしなくていいよ」
「わかったわ。それじゃ」
 彼女はそれを聞いてくれた。CDをしまった。
「船で、そして帰ってからもゆっくりと聴かせてもらうわ」
「うん」
「あとね」
 そして彼女は切り出した。
「私からの贈り物よ」
「贈り物?」
「ええ」
 彼女はそう答えてにこりと微笑んだ。
「二つあるけどいい?」
「ああ、いいよ」
 断る必要もなかった。俺はそれに頷いた。
「まずはね、これ」
 彼女は頭にさしていた。紅い花を手にとった。そしてそれを俺に手渡した。
「造花だけれど。大切にしてね」
「うん」
 椿だった。それを見て何故か悲しい気持ちになった。そのわけはわかっていた。微かにその香りがしたように感じた。
「そしてね、これも」
 そう言うと顔を近づけてきた。
「?」
 最初何をするのかわからなかった。だがそれは一瞬だった。
 彼女は自分の唇と俺の唇を重ねてきた。キスだった。キスといっても軽いフレンチキスだった。だがそれだけで充分だった。
「これね」
 それを終えた彼女は真っ赤な顔で言った。
「お別れに。その」
 恥ずかしそうに俯いている。
「私キスってはじめてだから。その。上手くはないけど」
「いいよ」
 俺は微笑んでそれに答えた。
「上手くは言えないけれど」
 そう断ったうえで彼女に言った。
「気持ちは伝わったから」
「そうなの。それなら」
 彼女はそれを聞いてはにかんで笑った。
「よかったわ。それでね」
「うん」
「よかったら来てくれるかしら。高雄に」
「いいの?」
「うん」
 こくり、と頷いた。
「よかったらね。待っているから」
「よかったらじゃないでしょ」
 僕はここで彼女に対してこう言った。
「えっ」
 それに驚いて顔をあげてきた。
「絶対に来て欲しいんでしょ」
「え、ええ」
 顔がさらに赤くなった。
「よかったらね」
「わかったよ」
 僕はそれに答えた。
「絶対に行くよ。それまで待っててね」
「ええ」
「行く時になったらメールするから」
「楽しみにしてるわ」
 彼女は朗らかに笑って答えた。
「だから、絶対に来てね、本当に」
「うん」
 俺は答えた。
「楽しみにしてるから」
「じゃあそれまで」
「暫くお別れね」
 ここで船内から放送が入った。出向用意だ。
「あっ」
 それを聞いて俺も彼女も顔をあげた。
「行かなくちゃ」
「うん」
「じゃあ色々と名残惜しいけれど」
「これで」
「再見」
 最後はあちらの言葉だった。彼女は泣いてはいなかった。俺とまた会うのを楽
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