07/19 岡島龍
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ない。
ワックスで整えられた明るめの茶色の髪とか、
細い眉毛とか、ずらされた太めの学ランとか、
彼女とおそろいだという腕のミサンガとか。
全部俺にはないもので、全部空斗だから似合うもの。
「龍も鬼ごっこすっか?」
「はは、鬼ごっことか懐い」
「俺らのマイブームなんやけ」
空斗がふわっと俺の肩に触れる。
「タッチーィ」
「せっこ!お前鬼かよ!」
大声で笑いながら走る空斗の後を追いかける。
端の方で本を読んでる少数の男子を横目に、
俺たちは自分の存在を示すように駆け回り、
おもしろくもないこと大声で笑い飛ばす。
玲也が「鬼誰やねーん」と廊下から叫ぶ。
「龍、龍!」
袖を捲った悠次郎が、短めの黒い髪をくしゃくしゃ触りながら俺を指差す。
「龍?あいつおせえから捕まえられんとちゃう」
「玲也てめえそっから動いたら殴んぞ」
さて、俺もやるか。
スイッチを切り替えるように学ランの裾をまくる。
やってみろよ、と挑発する玲也の顔も
教室の中心でなにやっとんのーと笑う元カノの声も
ん、とそっけない返事をして廊下へ走ったあいつの背中も
全部ひっくるめて、もやもやしたこの感情を抑え込むように
俺は廊下へ駆け出した。
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