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さんすくみっ
第一部
第二幕 畜生部活に入る
第二幕 畜生部活に入る
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ゃないか」
「……おや。誰かと思えばクソナメクジじゃないか」
 そんな俺の言葉を「フフ」と微笑して流すナメクジ。そしてそのまま俺の横に浸かった。
「身体洗えや」
「ボクは汚くないんだ」
「じゃあ風呂入るな」
「寒いじゃないか」
 ……何かメロンがお湯に浮いてる。何だ、この劣等感。
 肌はしっとりとしてきめ細かく、柔らかそうだった。黒くてゴツゴツした俺とは大違いだ。
「いつもこの時間に入っているのかい?」
「今日は偶然だ。明日から三時間は早めに入る」
「フフ。そうかい」
 流石に風呂場でまで本は読まないようだ。そのくせ、何故か目は合わせない。
「今年の新入部員は一人かなと思っていたんだけど、君が入ってくれて嬉しかった。流石に部員二名だと他の部活動の皆さんに悪いからね」
「二人だろうが三人だろうが、大きく変わらんだろ」
 一々キザったらしい感じが、なんか好きになれない。
「フフ。そうだね。欲を言えばあと二人は欲しかったな」
 二人ねぇ。
 あんな胡散臭そうな部に誰が入りたがるんだか。
「君は人間になってどれくらいになる?」
「答える義務がない」
「フフ。そうかい」
 …………ああ、もう。
「半年ちょいだ」
 去年の九月に人間になった。
 それから、生まれて初めて眠らない11〜4月を過ごした。
 その間の教育テレビ漬けや、基本動作の特訓はめちゃくちゃ面倒だった。何だって、今まで手足というものが無かったのだ。今だからこそ、こんなに便利なツールはないと思うが、当初は地獄だった。ようやく歩けるようになったのが、三ヶ月程経ってからだ。
「へえ。かなり最近なんだね。『技術』は進歩しているらしいけど、結局ボクは学園に通えるまで三年間かかったよ」
 そう言いながら、ナメクジは持ってきた桶の中から、一冊の本を取り出す。……はあ?
「何で風呂場で本なんか読めるんだよ」
「この本は特別性で、紙でできてないんだよ。ついでに言えば、このメガネも曇らない仕様」
 わざとらしくメガネをくいくいっとさせる。
「何読んでるんだよ?」
「ファンタジー系の小説さ。タイトルに興味はあるかい?」
「毛ほどもねえ」
「フフ」
 小説ね。
 活字を見るだけで頭が痛くなる俺には、まるで縁のないものだ。
「そんなんが面白いのかよ?」
「ボクの『人生』さ」
 『人生』ときたか。
「決して、ナメクジ時代には出会うことが無かったものだからね。これを読むことでボクは今人として生きていると実感できるのさ」
 そりゃあ、ナメクジってのがどんなもんか知らんが、人間のために作られたそれを、人間じゃないもんが読めるわけもあるまい。
 改めて考えると、人間の頭脳はずば抜けている。
 言葉、文字、数字、道具、その全てが人間による発明であり、同時に
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