第1話 「変化の訪れた日」
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のない日常だ、とこのときは徐々に不安が薄れつつあった。
★
将来を考えてみる、といった感じの授業があったこと以外、これといって何もなく学校は終わった。
冷蔵庫の中身が少なくなっていたので、買出しして帰ろうした。その途中で俺の耳に、ボートが壊されたという話が不意に飛び込んできた。
今朝抱いていた不安が蘇ってきた俺は買出しを一時中断して足早に聞いた現場に向かうと、警察や関係者と思われる大人たちが片付けを行っていた。偶々ここを通ろうとしたのか、高町たちの姿もあった。
「ここって昨日夢で見た……」
壊れたボートなどに目を向ける月村やバニングスとは違って、高町は周囲を見渡している。
一見するとおかしな行動のようにも思えるが、他に壊れている場所がないのか探していると考えればそうでもない。
〔……助けて〕
突然、頭の中に直接声が響いた。魔法の知識がある俺は、それがすぐに念話だと理解する。胸の中に抱いている不安が大きくなったのは言うまでもない。
「すずかちゃん、今何か聞こえなかった!」
「……何か?」
「……ちょっとごめん!」
高町は何かを探すように辺りを見渡しながら走り始めた。月村とバニングスは、彼女の行動に小首を傾げたが、急いで彼女のあとを追い始めた。
先ほどの周囲を確かめる行動……もしも俺と同じ夢を見ていたならば、あのような行動をするのに説明はつく。それに念話が聞こえると同時に走り出した。
これらから導き出される答えは……高町は魔導師としての資質を持っているのかもしれない。
昨日の夢が真実であり、高町が少年を助けたならば、彼女は少なからず魔法に関わることになる。少年の傷が治るまでの間だけ関わるのならば、これまでどおりの生活を送れる可能性はある。
だがもしあの黒い何かに襲われた場合、彼女は……。彼女に何かあれば、桃子さんたちはひどく悲しむだろう。
そのように考えると、力を持つ自分がどうにかしないという気持ちが湧いてくる。だが危険なことには首を突っ込まないように昨晩注意されたばかりだ。行動を起こすということは、それを無視したことになる。
……俺は父さんと母さんとの思い出がある街を壊されたくない。
高町が自分で関わったとしたら、桃子さんたちには悪いがそれは高町の自己責任だ。だが街に被害が出るのであれば、俺にも叔母の注意を無視して介入する理由ができる。できれば関わりたくないが……。
そんなことを考えながら俺は現場から離れて買出しを再開し、できるだけ早く家へと帰った。何事も起きないことを願いながら……。
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