焦がれる夏
弐拾 心は硝子か濁流か
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ない、球場が蜂の巣を突ついたような大騒ぎとなる。無死三塁。無名の国立高校が、横綱相手にまだ粘る。同点のランナーが三塁。
「キャプテンーーー!!」
「やっぱあんた最高だァーー!」
ネルフ学園ベンチの選手は、皆自分が打ったかのように喜ぶ。拳を振り上げる。
<四番センター剣崎君>
そしてこのチャンスで、1番のスラッガーを打席に迎える。四番の剣崎。180cm越えの身長、筋骨隆々の肉体、今日も二安打を放っている。
八潮第一サイドも、「こいつだけは要注意」そう思ってるバッターに絶好のチャンスが回ってきた。
「「「キョウヤ!キョウヤ!
ホームラン!ホームラン!
かっとばせーーキョウヤ!!」」」
応援席からの「5,6,7,8」が更にその勢いを増す。
それだけではない。内野席の一般観客もそれに合わせて手拍子を始める。応援に合わせて声を上げ始める。球場全体が、一斉に揺れ始めた。
物凄い、祈りと期待の渦。それがグランドを飲み込み始める。
「ボールフォア!」
そして、その期待の剣崎を御園は歩かせた。
思惑通りの同点打とはいかなかったが、しかし剣崎はこの四球に手応えを感じた。
(点を失っても同点だ。延長になれば層の厚い八潮第一有利のはず。それにも関わらず俺を歩かせて逆転サヨナラのランナーを出すんだ。相当浮足立っている。)
次の打者の藤次に剣崎は視線を送る。
(打てるぞ、鈴原!)
藤次は今日、全く当たっていない。御園の前にきりきり舞いだ。しかしその目の中の闘志は衰えない。打ち気満々。いや、打てる気満々である。
「おらぁー!ワイが同点にしちゃるわー!」
打席に入って、マウンドの御園に向かって吠える。御園はその態度に相当ムカッときた。
(……何勝ったような気になってんだお前ら……)
セットポジションに入り、御園は歯噛みする。
この球場に渦巻く、ネルフ学園に傾く流れが気に入らない。スクイズは一切警戒せず、打席の藤次だけを見て、渾身の真っ直ぐを投げ込む。
「ズバァーン!」
唸りを上げる剛球が捕手のミットに吸い込まれる。ここに来て息を吹き返したかのように、球速は146キロを記録した。
ひたすらにネルフ学園を応援していた内野の一般観客から、どよめきが起こる。
「おらぁー!」
しかし、藤次の様子は初回とは違う。
今度は146キロを見せられても、驚きもせず、怯みもしない。まだ打ち気満々に吠えている。
(黙らせてやるよ!!)
もう一球、御園は真っ直ぐを投げ込む。
藤次は、今度はフルスイングで迎え撃つ。
キン!と高い音が響き、ファウルチップが真後ろに飛んだ。
(なっ……)
御園はそのファウルに、目を大きく見開いた。
そのスイングは、タ
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