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少年と女神の物語
第二十三話
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だし、時間は無駄にしたくない。武双お兄様、もう体とか洗った?」
「いや、まだだが・・・もう出てってもいいか?」
「それは許可できない」

 さっさとここから逃げたいんだけど、どうやら逃がしてくれる気はないみたいだ。
 マリーは捕まえようと思えば簡単に俺を捕まえるだろうし、寝技で俺を身動き取れないくらいには出来る。
 この状況で密着されるリスクを負うよりは、大人しくしてるほうが得策かもしれない。

「じゃあ、背中とか頭とか洗うから、こっちに来て座って?」
「・・・はあ、分かりましたよ。大人しくしましょう」

 俺が大人しくマリーの指す椅子に座ると、マリーはこれまた予想外なことに普通に背中を洗い、頭も洗ってくれた。

 まあ、私にもお願い、といわれたがそれくらいなら問題ないと考え、洗ってやった。



◇◆◇◆◇



「あ、お兄ちゃん!お邪魔してます!」
「ああ・・・帰ってきたらいるのはビアンカか。今日はどこに行っても誰かいる日なのか?」

 風呂から上がって部屋に戻ると、そこにはビアンカがいた。
 まあ、マリーとは違いビアンカがここにいることに驚きはない。

 家に来る前にいた家で、自分が寝ている間に家族が皆、殺されてしまい、それ以来一人で寝ることが出来ず、起きた際に近くに誰もいないとパニックになるようになったのだ。

 そして、それ以来幸運に恵まれるようになるという、なんとも皮肉なものである。

「まったく、もう中学生なんだから男兄妹と寝ることに抵抗とかないのか?」
「うーん・・・ない!」
「元気でよろしい・・・トイレとか行ってくるから、もう少し待ってくれるか?」
「あい!」

 俺はさっさとすることを済まし、部屋に戻り、布団に入った。
 自分の布団も一応準備されているのだから、持ってきてそれで寝ればいいのに、ビアンカはそうしようとはしない。
 必ず、その部屋の主と同じ布団に入り、寝る。狭くて寝づらいと思うのだが、本人曰く、そっちのほうが安心するのだそうだ。

「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい。どこにも行かないでね?」
「いかないよ」

 これを聞いて、ビアンカは安心したように眠る。

 さて、俺ももう寝るとしよう。

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