暁 〜小説投稿サイト〜
チャイナ=タウン
第二章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
よく似合っていた。そして黒いおさげの髪をほどいて後ろにたらしている。波がかった髪がよく似合っていた。
「お待たせ」
「いや、今来たばかりだから」
「有り難う」
 彼女はそれを聞いてこう言った。
「優しいのね、日本の男の人って」
「そうかな」
 俺はそう言って誤魔化した。だが俺がここで待っていたのはお見通しらしい。
鋭いようだ。
「で、何処に行くの?」
「関内に行こうよ」 
 あそこの商店街は気に入っている。彼女も知っていると思いそう提案した。さて、どうなるか。俺は彼女の動向を注視した。これで成功したかどうかがわかる。
「いいわね」
 彼女はそう答えて微笑んだ。
「あそこならいいわ」
「よかった」
 俺はそれを聞いて素直に微笑んだ。
「じゃあ行こうか」
「ええ」
 俺はタクシーを呼び止めようとした。だが彼女はそれを制した。
「それは必要ないわ」
「何で?」
「歩いていけばいいじゃない。歩いていける距離だし」
「いいの?」
 確かに歩いていける距離だが女の子には少しつらいではないかと思いタクシーを呼んだのだったが。どうやらそれはいらぬお節介だったらしい。
「それにお話もできるし」
「あ、そうか」
 これには納得した。俺はそれに従い彼女と二人で歩いて関内に向かった。 この時手を繋ごうかと思った。しかしそれは図々しいと思ったので止めておいた。そして歩きはじめた。話をしながら。
「ふうん、台湾出身なんだ」
「ええ」
 彼女は答えた。
「高雄のね。ここと同じ港町よ」
「そうなんだ」
 台湾には行ったことがない。だから高雄がどんな街かは知らなかった。
「横浜は綺麗だけれど高雄は違うわ。人が多くて」
「ふうん」
「けれどいい街よ。活気があって。一度来てみたらいいわ」
「そうさせてもらうよ」
 俺はそう答えた。
「その時は案内してくれる?」
「いいわよ」
 彼女はそう切り返してきた。
「けれど条件があるわ」
「条件」
「ええ」
 彼女は答えた。
「今のデートで楽しませてよね。台湾の女の子は厳しいわよ」
「畏まりました、娘々」
「お願いするわ」
 台湾の女の子は気が強いとは聞いていた。だがここまではっきり言われるとは思わなかった。だがそれがかえって俺の好みに合った。
 今度は野球の話になっていた。横浜スタジアムの前で待ち合わせをしたからそれも当然だったかも知れない。だが俺は今一つ乗り気ではなかった。横浜の今シーズンのことを思うと乗れる筈もなかった。
「野球は嫌い?」
 それを察したかこう尋ねてきた。
「い、いや」
 俺はそれを慌てて否定した。
「高校まで野球部だったし」
 これは事実だ。
「今もよく観ているよ」
「なら好きなのね」
「ああ」
「けれどその割に乗
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ