A's編
第三十一話 裏 前 (グレアム、クロノ)
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が、グレアムは白髪が混じる老体だ。さらに、強力な使い魔も二体所持している。
もしも、双子を解放すれば、グレアムも一線に残れるかもしれないが、家族のような存在の二人を解放するつもりがグレアムにあるとは考えにくい。
つまり、作戦後のグレアムはその職には力不足になってしまうのだ。もしも、これが一般的な提督ならば問題はないかもしれないが、グレアムは名前をとどろかせる英雄。その英雄の力がそがれたという事実はやはり時空管理局内外に影響を与えるだろう。
「先ほど言った意味がわかるだろう? 君には、私の後継になってもらわなければならない。だからこそ、大人しくしてもらわなければ。いや、少しの反抗はいいのだが、決定的な部分で邪魔をされてはすべてが台無しになる」
グレアムが危惧していることが分かった。つまり、最後の段階でクロノが邪魔しないか不安なのだ。ユーノという希望があるからこそ、クロノが最終的段階で手を出してくる可能性をグレアムは見たのだ。
もしも、クロノが作戦を邪魔したらどうなるだろうか。それも、まだ希望が見えている、という段階でだ。もちろん、クロノの行動は命令違反であり、処罰の対象になってしまう。その後、作戦がうまくいったとしても、クロノがグレアムの後継になることは不可能だろう。
クロノが考えるに、グレアムにとってベストは、今回の作戦に内心、納得しておらず、それでも命令に従いながら作戦を最後までやり通すということだろう。グレアムがやめた後、クロノと同様に今回の作戦に納得していないものは、グレアムを恨みながら新しい清廉潔白な後継者であるクロノを受け入れることだろう。
「大丈夫だよ〜、クロスケ、あたしたちも手伝うからさ〜」
ひらひらと軽い笑顔で手を振るリーゼロッテ。
彼女たちが言いたいことは明白だ。つまり、志の部分でクロノが後継し、不安が残る経験と実力についてはリーゼアリアとリーゼロッテが補うということだろう。さらに、内心ではそう思っていないにしても、グレアムについて、信用できなくなった、としてクロノに主替えしたとなれば、もはやクロノの後継はゆるぎないものとなる。
ハラオウン家という家柄、今回の作戦について納得のいっていない清廉潔白な志、リーゼアリア、リーゼロッテという生き字引。十四歳で執務官という実力。もはや、彼を後継者―――いや、新たなる穏健派の盟主として認めないものはいないだろう。
「それでは、な。クロノ。また作戦が終わった後に会おう」
「ま、待ってくださいっ! 提督っ!!」
手を伸ばそうとしても、その手は動かない。せめてものあがきで身をよじるが、それさえもグレアムは一瞥もせずに執務官室から出ていく。
クロノは、グレアムの必死ともいえる背中をただただ見送ることしかでき
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