A's編
第三十一話 裏 前 (グレアム、クロノ)
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てきた言葉、『夜天の書』。その言葉が彼女の口から出てきたということは、少なくとも彼女たちもつかんでいるのだ。闇の書の正体を。だが、それでも、彼らは彼らが提示した作戦を進めようとしている。クロノから言わせれば、一人の少女を犠牲にした作戦を。
「違う、違うよ、クロスケ」
「私たちだって、好きでやってるんじゃない」
「だった、なぜっ!?」
そうクロノが憤るのも無理はない。今回の作戦の指揮官はギル・グレアムだ。彼が作戦変更の決断を下せば、容易に彼女の犠牲は避けられるかもしれないのに。
「―――ならば、クロノ。お前が抱いている希望に目途はついたのか?」
今まで黙っていたグレアムが口を開く。その言葉に今度はクロノがぐっ、と押し黙るしかなかった。なぜなら、クロノが抱いている希望は、ユーノが未だに探している闇の書を再生へと導く資料。ただ、その一つだけであり、それ以上はなかった。それが見つかれば、闇の書は夜天の書という無害なロストロギアへと変わり、少女が犠牲になることもなくなる。
しかし、それは希望であり、目途が立ったわけではない。不眠不休でユーノたちスクライア一族が探しているが、よほど深いところにあるのか、あるいは、無限書庫には存在しないのか、いまだに見つかる兆候は見られない。
「そういうことだ。目途のつかない作戦のために邪魔されてはかなわない」
「そんなこと―――」
するはずがないっ! という言葉は、リーゼアリアとリーゼロッテの冷たい視線によって止められた。
「それはどうかな? クロスケ、あたしたちがしている事に反対だろう?」
当たり前だ。誰かを犠牲にして得られる平穏に意味はない、とクロノは思う。こうじゃなかったはずの出来事に巻き込まれることはあるだろう。それが世界なのだから。だが、誰かをこうじゃなかったはずの未来に巻き込んでいいとは思わない。ましてや、相手はいたいけな少女だ。一人の少女の未来を閉ざすことなど許されはしない。
「なら、ぎりぎりで邪魔してもおかしくない。いや、それほどの危うさを持ってもおかしくないでしょう? 闇の書はあなたの親の仇なのだから」
それは事実だ。前回の闇の書は、クロノの父親のクライドの船ごとアルカンシェルで亡くなった。しかし、そのことにクロノは何の感慨も持っていない。確かに悲しい記憶はあるが、子どものころの記憶であり、すでに心の整理はすんでいる。むしろ、感情的になりやすいのは―――。
「それは、君たちのほうじゃないのか?」
クロノの問いには表情を変えやすいリーゼロッテが若干、歪んだ表情をすることで応えていた。
クライドの直接の死にかかわった人間。それが目の前のグレアム、リーゼアリア、リーゼロッテだ。グレアムにしてみれば、可愛がって
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