A's編
第三十一話 裏 前 (グレアム、クロノ)
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もらう」
それは、お願いでも、依頼でも、命令でもなく決定事項だった。それ以外の道は認めないとでもいうように。グレアムの表情からは何も読み取れない。ただ、目を見ればわかる。彼には何か強い意志のようなものが籠っていることだけは。それは、誰にも動かせない岩のようなものだろうか。
だが、動けない、動かすことができないからと言って、このまま「はい、そうですか」と受け入れてやるわけにはいかない。
「どういうことですか!? グレアム提督!」
情けないことだが、クロノにとっては、叫ぶことだけが唯一の反抗といってもよかった。
クロノの叫びにグレアムは、応えない。ただ、無表情の能面のような冷たい表情でクロノを見つめるだけだ。クロノだって、自分を拘束するぐらいなのだから、何らかの理由があって、それを素直に答えてくれるとは思っていない。叫んで、問いかけたのはせめてもの抵抗だった。
しかし、その答えは意外なところから返ってきた。
「理由はあんたが一番知ってるだろう?」
「なんだって?」
「無限書庫、闇の書―――そして、夜天の書」
まるで双子が示し合わせたように言葉を紡ぐ。そして、リーゼアリアが口にした単語がすべてを物語っていた。クロノがこの状況に陥っている理由を如実に示していた。
「……知って、いたのか」
ばれていないつもりだった。少なくとも、ユーノたち一族への調査費の支払いは執務官が個人で使える捜査予算の中から出していたし、それらの捜査結果に関してはクロノが報告書とともに提出している。今回の闇の書事件で調査を行うのは別段怪しい話ではない。リーゼアリアたちにも勘ぐられているとは思っていたが、ここまで直接的に行動に出るとは考えていなかった。
「当たり前だよ。あんたは、熱血そうに見えて冷静さをどこかで忘れない。悪あがき、ってやつを考えるぐらいなら、次の行動に移してるね」
「そう、だから、私たちは理解した。あなたは無限書庫で何かをつかみ、そして、それは希望になっている」
付き合いが長いことが災いしたのだろう。彼らは誰よりもクロノのことを知っていた。確かに彼女たちの言うとおりだ。もしも、ユーノの調査が想像以上に順調でなければ、おそらくクロノはユーノに謝礼金を支払ってそこで打ち切っただろう。間に合わない、と結論付けて。
その場合、クロノはおそらく次の行動に移ったはずだ。たとえば、高町なのはに協力を依頼する、などの別の行動に。
そのような行動が見られなかった以上、クロノは何かしらの成果をつかんだと思われたのだろう。確証はなかった。しかし、彼らはクロノがつかんだ『何か』が怖かったのである。
「そんなに……そんなにあの作戦を進めたいのか!?」
リーゼアリアの口から出
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