A's編
第三十一話 裏 前 (グレアム、クロノ)
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は通信が切れた向こう側で戦っているであろう知人を思う。同時に、この方面に関して何もできない自分を呪う。力づくであるならば、まだ戦いようもあったのだが、この戦いは知識や文化方面による戦いであり、クロノは門外漢だった。だから、せめて彼が働ける時間を稼ぐために動こうと思った。
―――1秒でも長く時間を得ること。
それがクロノにできる唯一のことだった。
だが、クロノは忘れている。先ほど、時空管理局は異なるベクトルの正義の集まりだと考えた。ならば、クロノが自らの正義を実行したいようにほかの者も自らの正義を実行するのだと。
「クロノ、入るぞ」
「グレアム提督――っ!」
執務室のドアが自動的に開いて入ってきたのは、クロノが所属する派閥のトップに位置する提督でもあり、自らの恩師たちのマスターでもあり、今回の作戦を立案したギル・グレアムだった。その二歩後ろには、彼の使い魔でもあり、クロノの師匠でもあるリーゼアリアとリーゼロッテが控えていた。
彼らの雰囲気は、これから話題話をしようというほど穏やかなものではなかった。むしろ、どこか尖っているような、ピリピリとした空気を肌で感じている。
もしも、任務の途中の戦地であればクロノはすぐさまにデュランダルを構えていただろう。だが、相手が恩師であること、ここが執務室であることも合わせて一瞬だけ判断が遅れた。そして、その判断の遅れは致命的ともいえた。それは、過去に師匠であるリーゼアリアとリーゼロッテにも言われたこと。
―――戦場の一瞬の躊躇や戸惑いは致命的なものになる、と。
だから、次の瞬間、クロノは彼女たちの行動にまったく動くことができなかった。
「なっ!?」
クロノが驚きの声を上げたのも無理はない。
一瞬の剣呑な雰囲気を感じ取ったクロノが、懐からデュランダルを取り出そうとした瞬間に、リーゼロッテが風のように動き、クロノの右手をひねりあげたかと思うと、リーゼアリアがカードを片手に束縛系の魔法を使う。一瞬の間にクロノは反撃手段を封じられ、動きを封じられていた。
「なにをするんだっ!?」
クロノは、状況が理解できず叫ぶ。
その叫びに対して3人の雰囲気は変わる様子は見られなかった。ただ、剣呑とした雰囲気と一瞬たりとも気を抜くような気配を見せない。あのリーゼロッテだって、今は真剣な表情をしている。
クロノの執務官としての頭脳は状況を理解しようとして必死に回す。状況確認と冷静な判断を下そうとするのだが、上手く回らない。状況を把握する前に疑問が浮かんでくる。なぜ? どうして? という疑問が。
「クロノ」
3人の剣呑な雰囲気の中、口を開いたのはグレアムだった。
「お前には、このまま作戦終了までこの部屋にいて
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