暁 〜小説投稿サイト〜
生還者†無双
拠点
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刃先が薄着の暁の肌を掠めた
渾身の一撃の刀身は地面を大きく穿つ
その一瞬の隙を見逃すはずもなくどす黒い殺気が辺りを包んだ
元々カウンターを狙っていたのだ、正に予定通りの展開
地面にめり込んだ剣を足で踏み押さえつけ
「しまっ……!?」
「もらったぜっ!」
死に体になった思春に豪腕を振りきった
や……殺られるっ
この殺気……尋常ではないっ!
武人としての経験からして……奴は本気だ
目を瞑り迫りくる必殺の拳が己の命を刈る瞬間を待った
しかし、いくら待っても殴られた衝撃も痛みも無いのはどうゆう事だ?
恐る恐る目を開けると視界一杯に拳が見えた
顔ギリギリ鼻先の所で拳を止まっている
鋼も打ち砕きそうな猛者の鉄拳
こんなものが当たったらと思うとゾッとする……
即死か……もしくは酷く不自由な生活を送る羽目になるだろう
思春は腰を抜かしたのか安堵からなのかその場に座りこんでしまった
目の前の男を忌々しげに睨み付ける
真剣勝負(一方的)で手加減をされた悔しさ、恐怖、怒り
様々な負の感情が湧き出てて……叫ばずにはいられなかった
「何故……止めたっ!情けかっ!」
「そんなんじゃあねぇよ」
「私はお前を殺そうとしたんだぞ!」
「んなこたぁ、知ってる」
「では何故だっ!私は殺す価値も無いかっ!こんな屈辱……」
バッと暁はしゃがみ思春と同じ目線の位置になり
鼻先に指をビシッと突き立て吠えた
「お前本当に自己中な奴だな!いいか良く聞けよ、こんなくだらねぇ所でお前本当に死にたいのか?」
「そ……それは……」
思わぬ反撃に言葉が詰まってしまう甘寧
混乱する彼女を気にする事なく暁は更に捲し立てる
「俺は孫家だか孫悟空だか知ったこちゃねぇ、だが一時とは言え仲間になった奴を殺るのは寝覚めが悪いんだよ!」
夜の練兵場に暁の声が響く
松明がパチパチと燃えている音
ビューと乾いた風が吹き抜け砂を飛ばす
静かな夜の沈黙が暫く続いた
「わ、私が仲間だと……?」
沈黙を破り思春が尋ねた
「俺はそう思っていたが」
「お前を2回も殺そうとしたのだぞ?」
「ふっ、戦場での事は恨みっこ無しだろ」
暁が苦笑しながら思春に向けて手を出す
キョトンした表情でその手を見ていたが直ぐに握り立ち上がる
中々身長差がある二人だが不思議と違和感はなかった
松明の光と月明かりだけの薄暗い練兵場
あまり良く表情は見てとれないがお互い清々しい顔をしている
「まぁ何だ、これからよろしく頼むぜ甘寧」
「思春だ」
「あ?それって真名じゃ……」
「そうだ!私の真名は思春……これからそう呼べ!」
顔を背けながら思春は言った
直後、脚の爪先から頭のてっぺんまでマグマが駆け抜けた
恥ずかしさか、単なる戦闘直後の高揚か
バグバグと心臓が速足で鼓動い
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