歌い手、勝負する
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しないほど、効果が強い。
音の大きさからしてさっきまでのフルートには音を大きくする効果もあったのだろうが、ラッテンさんはそれを取っ払い、純粋な音を届けれる楽器に変えたのだ。
「ルールはいかに観客を魅了できるか。観客は、そうね・・・この火蜥蜴たちでどうかしら?」
「では、それで行きましょう。こちらも準備は出来ました」
火蜥蜴の皆さんは僕とラッテンさんから等距離の位置に集まっているので、音を大きくする必要はない。
僕も今まで無意識のうちに使っていた音響操作を意識して消し、純粋な音を届けれるようにする。
「じゃあ、始めましょうか。“音楽シリーズ”二人による、贅沢なコンサートを」
「ええ、始めましょう。“音楽シリーズ”二人による、ちっぽけなコンサートを」
もうあの曲は二度聴いて覚えた。
「「曲目『幻想曲ハーメルンの笛吹き』」」
そして、同時に演奏が始まった。
♪♪♪
二人の演奏は、技術的には互角だった。
フルートのみで主旋律を演奏するラッテン、歌がないのなら、とオリジナルでオーケストラアレンジをする奏。
どちらの演奏も完成はしておらず、成長性という魅力を出している。
だが、観客の反応は分かりやすかった。
意識を失っている火蜥蜴も、最初のうちは一切動かなかったが、中盤に差し掛かった辺りで一部一部が行動を始めた。
それも、動いているのは全員が奏のほうへと歩いていくのだ。
そして、それ以降の動きも、全て奏の方へ歩いていくだけ。ラッテンのほうには一人も向かわない。
そして・・・
《ああ、これは・・・ダメね。私の負け》
ラッテン自身も奏の演奏に感動してしまい、フルートから口を離す。
そしてそのまま、奏の演奏が終わるまでじっと聞いていたのだ。
???
「ご静聴、ありがとうございました」
演奏が終わってみれば、ラッテンさんは既に演奏をしていなかった。
それどころか、フルートを下ろして拍手までしてくれていた。
「いい演奏だったわ。私には、勝てる気がしなかった」
「そうですか。もしそうなら、それは貴女のおかげですよ」
「あら、私何かしたかしら?」
ラッテンさんは首をかしげて聞いてくるが、僕からしてみればそれは紛れもない事実なのだ。
だって・・・
「僕は始めて、誰かと一緒に演奏することが出来た。最後まで出来なかったのは残念ですけど、とても、楽しかったんです」
音楽を心から、楽しむことが出来た。
初めて誰かと一緒に音楽を奏でることが出来たのは、本当に嬉しかったのだ。
「ああ、そういう・・・やっぱり面白いわね、貴方」
「・・・そうですか?」
「ええ、そう。か
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