五幕 硝子のラビリンス
6幕
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――フェイの傷の痛みが治まってから、彼女たちは先に行った仲間を追うべくトリグラフに戻った。
途中でジュードからローエンにメールが入り、彼らはヘリオボーグの丘を目指すことが分かったので、フェイたちも一路ヘリオボーグを目指した。
「ローエン、ホントにダイジョウブ?」
ヘリオボーグに来てから、目的地までに坂道があった。そこでローエンがフェイをおんぶで運ぶと申し出たのだ。
治癒術で傷は治っても違和感は残る。ローエンはフェイが足に受けた傷を慮ってくれたのだ。
最初は素直におぶさっていたフェイだが、途中でローエンが老齢だと思い出し、不安になった。
「何の。ジジイもまだまだ若い者には負けません」
「本当に?」
「本当ですとも。これでも元軍人。足腰には自信がありますぞ」
エリーゼがくすくす、ティポがニコニコ笑う。エリーゼも最初はフェイと同じように心配していたのに、途中で笑って「しょうがないですね」と認めた。
「こうしてると、ローエンがおじいちゃんで、フェイは孫娘みたいですね」『じじ孫コンビ結成っ』
「ではエリーゼさんはフェイさんのお姉さんですね」
「ふえ!? わ、わたしがお姉さんでいいんですか?」『年下なのにー』
「エルさんがフェイさんのお姉さんなのですから、エルさんよりお姉さんのエリーゼさんがフェイさんのお姉さんでも支障はないでしょう。ねえ、フェイさん?」
「うん。えっと……エリーゼ姉さん」
「ね、ねえさん!?」『何て新鮮な呼ばれ方! ときめき度高まるー!』
エリーゼは真っ赤になって目をぐるぐるさせている。こんなエリーゼだが、フェイはエル以外で初めて、彼女が姉だったら嬉しいだろうと思った。ハ・ミルでエリーゼがエルに「バーニッシュ(両国で大人気のヌイグルミ)が来てくれます」とはっきり告げた時には、特に。
そんな少女たちの思案をぶち壊す音が鳴り渡った。
丘の上から、爆音が轟くのが聴こえたのだ。
フェイはエリーゼと顔を見合わせる。肯き合った。
「ローエン、下ろして」
ローエンは一瞬間を置いたが、屈んでフェイを降ろした。アリガト、と告げて地に足をつける。
(お姉ちゃん、パパ……!)
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