暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 赤いプレイヤーの日常
四話〜提示〜
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(いぞん)なしと捉えたのか、アスナは、ぎぎぎときしむイスから立ち上がり、ちょっと手を上げて、「すいませーん。お会計お願いしまーす」と声を上げた。
 その直後、ようやく硬直から回復した俺は、今考えられる中で最悪の事態である、『徒歩での移動』をなんとしても避けるため、反射的に店員NPCとアスナの間に躍り出た。そして妙なテンションで、「ストーップ!」と叫――ぼうとした瞬間、いつのデジャブか、頭の中にピローンと、メッセージの受信を知らせる電子音が鳴り響いた。その無機質な音が、オーバーヒート寸前だった俺の脳をクールダウンさせる。

「……あ、あの、キリトくん……ち……近いんだけど……」

 いつもより一オクターブほど高い、アスナの悲鳴に似た囁きにハッと顔を上げる。彼女の言うとおり、まさに目と鼻の先に赤く染まったその顔があった。

「ぬわぉっ!」

 自分でもよくわからない奇声を上げ、戦闘時並みのスピードで後ろへ飛ぶ。極力音を殺して着地し、心拍数うなぎ上りな心臓を押さえつけ、皆の表情を一瞥してみると、どうやらアスナだけでなく、――クラディールは相変わらずだが――ティーナの頬まで赤くそまっているようだった。

 ――何かとんでもない誤解をされてる気がする――

 瞬時にそう感じた俺は、あわてて弁明に入った。

「い、いや、今のはちょっとメールが……その……いきなり鳴ってだな……」

 我ながら見事なテンパりっぷりだが、これだけでもなんとかアスナには伝わったようで、彼女はしばらく呆けた後、ぎこちなく笑った。

「は……あはは、そう、そうだよね。もう、びっくりしたなー。いきなり飛び出してくるんだもん。どうかしちゃったのかと思ったよ。……それで、そのメールっていうのは誰からなの?」

「あ、ああ、えーっとだな……」

 心臓がいまだ激しく脈打っているが根性で無視し、メニューから『新しいメッセージがあります』と出ているタブをタップ。瞬時に現れた空白の多い画面を見つめる。そこには短く、「今いいカ?会って話がしタイ」と、宛先のところにアルゴという文字だけが並んでいた。

「……アルゴからだ……今、会えないかだってさ――それにしても珍しいな、アルゴがこんなメールよこすなんて」

 後半は独り言だったのだがアスナには聞こえていたらしく、こちらの手元を覗き込んできた。俺は急いでウィンドウ可視モードに変更し、文字のところを指差した。

「……そうね、いつもならもう少し具体的よね。理由も書かないなんて、よっぽど急いでたのかしら」

「ああ、そうかもしれないな」

 そういえば、以前にも同じように極めて簡潔な文章がアルゴから送られてきたことがあった。その時は、よく覚えていないが確かに大変なことがらだった。
 いずれにせよ、返事
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