暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 赤いプレイヤーの日常
四話〜提示〜
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「――で、と言うことはさ。結局、今わかっているのはさっきの話、《死武王(しぶおう)》がユニークスキルかもしれないってことと、妙な効果があるってことの二つだけ……なんだよな?」

「はい」

 いつものような笑顔で、ティーナは即答した。いやにきっぱりと言うもので少しばかり気後れしたが、それはぐっと飲み込み、続ける。

「その、それだけってことはさ。死武王の討伐……もとい捕縛(ほばく)を頼みに来たのに、死武王の所在どころか、性別とか、どういう装備なのかもさっぱりわかりませんってこと……なんだよな?」

「はい」

 またも即答。しかもさっきより数段上の「いい笑顔」付き。
 瞬間、現状を理解した俺の頭の中に、呆れや怒りでない何かが湧き出した。
 あろうことかこの少女は、素材調達や運び屋なんかのいわゆる簡単な依頼ならまだしも、一人とはいえ犯罪者(オレンジ)、否、殺人者(レッド)プレイヤーで、しかもユニークスキル持ちかもしれないという『死武王』を捕らえる(無論第一層の黒鉄宮に送るという意味だが)という、とても簡単とは思えない依頼に、常識的に必須だと思われる「下調べ」というものをほとんどしていなかったのだ――というかなんで俺はこんな依頼をぽーんと引き受けてしまったのだろう――
 まあどのみち、何もわからないのではなんのしようもない。こりゃ討伐どうこうよりアルゴにでも聞いた方がいいかもなあと思い、その言葉を舌にのせてリピートしようとしたその時、

「ですがご心配なく!」

 突然、再生ボタンを押す手を遮る誇らしげな声が、イスを押し倒す鈍い音とともに鼓膜を震わせた。
 微動だにしないクラディールを除いたメンバーが、声の主、ティーナに注目したことを、彼女は確認するとさらに胸を張り、言った。

「私の方でその手に詳しい情報屋の方をお呼びしておきましたから」

「へ……ちょ、ティーナちゃん、そんなの聞いてないよわたし」

 今まで口を閉ざしたままだったアスナが顔を上げた。が、さきほどのショックはまだ抜け切っていないようで、その声はやけに弱々しい。
 そんな状態のアスナを気にしたのか、高ぶっていたティーナのテンションが少し下がった。

「まあ、まだ交渉の段階ですのであえて言う必要もありませんでしたし、……なによりアスナさんは知らないほうがいいと思いまして……」

 アスナが訝しげな顔を造る。

「……それってどういう意味?」

「会えばわかります……まあでも、キリトさんにはお伝えしておいたほうがいいかもしれませんね」

「……え」

 急に話を振られ、思わず言葉につまってしまう。立ち直り、問い返してやろうと試みたときには既にアスナの視線が痛かった。

「ちょ、ちょっとまてよ。なんでアスナはだめで俺はオーケ
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