焦がれる夏
拾漆 口火
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少し太めの体型でパンチ力がある。
(辻先は真っ直ぐに強い打者…)
しかし真っ直ぐに強い辻先に対しても、真司は真っ直ぐで勝負を挑む。
コースを突いた真っ直ぐに対しても、初球二球目と、辻先は鋭いファールを続ける。
その打球に、スタンドは湧く。
(…少し遠回りのスイングだから、コースを突けばそうそうジャストミートはできない)
マスク越しに、薫はニヤリと笑う。
三球目に要求したのは外のスライダー。
絶妙なコースに投げ込まれ、辻先のバットは簡単に空を切った。
「ストライクアウト!」
真司はグラブをパン、と叩いてベンチに帰る。
薫も拳をグッと握りしめた。
無駄球は一切なし。
選抜ベスト4の八潮第一打線を手玉にとって、
初回の守りを終えた。
「おっしゃーー!」
「ええでセンセー!」
「碇さんやっぱ神だわ!」
意気揚々と自軍ベンチに引き揚げるネルフ学園ナイン。ベンチの前で、真司と皆がハイタッチを交わす。
「何だ何だ辻先ィ〜130台の凡Pに何くるくるしてんだァおい〜」
吾妻が呆れ顔で、気怠そうに守備に向かう。
御園は、湧き上がるネルフ学園のベンチとスタンドを見て、嫌な予感を膨らませていた。
ーーーーーーーーーーーー
「いいぞォー!シンちゃーん!」
ネルフ学園の応援席では、美里が大声を張り上げていた。
「…よかった」
玲はひとまず安堵して、炎天下のスタンドで熱くなった自分のトランペットを手に取る。
一休みする暇もなく、自軍の攻撃が始まる。
応援団のプラカード係が「アオバ スパニッシュ」と書いたカードを掲げる。
エンジの揃いのシャツを着た総勢150人の応援団が、立ち上がりメガホンを持つ。
吹奏楽部の指揮者がタクトを振り、玲を初めとしたトランペット奏者が出だしの部分を吹き始める。
「スパニッシュフィーバー」の勇壮な音色が、県営球場の空を満たしていった。
ーーーーーーーーーー
「よーし燃えてきたぜ!」
ネクストで素振りしながら、自分の曲が流れてきたのを聞いた青葉は気合いを入れる。
その青葉に、健介が近づいた。
「佐々木は実質3番手。130キロくらいのストレートに持ち球はスライダーと…」
「ああ、大したことないって事でしょ?分かってます。ぶちかましてきますから」
健介の助言もそこそこに、青葉は打席に向かった。
「…全くもう、話を聞けよ」
ネクストに残された健介は寂しそうに口を尖らせた。
<一回の裏、ネルフ学園高校の攻撃は、一番ショート青葉君>
投球練習が終わり、球場にアナウンスが流れるのと同時に青葉が左打席に立つ。気持ちバットを短く持って、体をリズムに乗せて揺らしている。
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