焦がれる夏
拾漆 口火
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
盤にベストコンディションで迎える為、また甲子園本番でのスタミナ切れを防ぐ為の追い込み練習である。疲労がピークの状態で、初戦を迎えるのだ。
彼らの目に映るのは、全国の舞台のみ。
「集合準備ィ!」
審判がグランドに姿を現したのに合わせて、
両軍の選手がベンチ前に列を作る。
「集合!」
ホームベース付近に向け、全員が駆け出した。
ーーーーーーーーーーーーーー
ドン ドン ドドドン
「「「ホーーームランッ!!
ゆ う き ーーーーーッ!!」」」
八潮第一の応援スタンドから、野太い声が炸裂する。県内最多、132人の部員。ベンチに入れなかった部員による大応援だ。
「「「オーオーオーオー
ゆ う きーー!!」」」
「東北1番打者のテーマ」か。確かに声は大きいけれども、ブラスバンドは下手だなぁ。
マウンドで八潮第一の応援席を見上げながら、真司は思った。
<一回の表、八潮第一高校の攻撃は、一番、
ファースト、吾妻くん>
左打席に180cm78kgの大型打者が入る。
高校通算43本塁打。選抜でも打率五割をマークした、埼玉ナンバーワンのスラッガーである。
(いきなり、四番打者が出てくるようなものだ。全く層が厚いね。この人を一番に置けるのだから。)
楽しそうにニヤニヤと笑う打席の吾妻をマスク越しに見て、薫はため息をつく。
気持ちオープンスタンスで、バットを寝かせて構える。バットがタイミングをとるように揺れ、手首の力が抜けている。
「「「オーオーオーオオ オオーオ
ゆうきーー!!
オーオーオーオオ オオーオ
ゆうきーー!!」」」
八潮第一の応援席は意気上がる。
内野席の観客も、その打撃に注目し、そして期待する。
(よし、始めるか)
真司は薫のサインに頷き、こじんまりと振りかぶる。左足をスッと上げ、一本足で一瞬力を貯める。半身の姿勢のままで静かに踏み込み、左足の着地と共に、一気に体重移動。そしてボディーターン。
前から後ろの体重移動と、半身の体の横回転。
それが狂いなくピタリと一致し、長い腕がしなやかに振られた。
試合開始のサイレンと共に、初球から際どいコースに飛び込んでいくボール。
吾妻は、振り子気味に上げた足を決然と踏み込み、バットを一閃。
「カーーーーン!」
快音が響いた。
ーーーーーーーーーーーー
「オーライ!」
強烈なライナーは、フェンスに張り付くように深く守っていたセンター剣崎の真正面。ほとんど動かず、そのグラブの中に打球が収まる。
「ナイスキャ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ